『じゃあ、あんたが作ってみろよ』壮大な別れから開幕 竹内涼真が痛さとかわいげを好演

「無理」
東京タワーが見える夜景が綺麗に見渡せるフレンチレストラン、差し出された王道なダイヤの結婚指輪、完璧なはずの勝男(竹内涼真)の渾身のベタすぎるプロポーズに対して鮎美(夏帆)がはっきりと拒絶を示す。結婚寸前かに思われた2人が壮大に別れるシーンから開幕する『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)第1話。

勝男と鮎美は、地方の大学のミスターコンテスト、ミスコンテストの優勝者同士で結ばれたようで、勝男は安定した大手メーカー勤務のようだし、鮎美は商社の受付勤務と、なんだか香ばしい設定だ。自分たちの組み合わせや生活すべてを「完璧」と信じて疑わない勝男とそれに尽くして付き合う鮎美。そんな2人が同棲しているエリアが高円寺というのが最初はなんだかしっくりきていなかったのだが、勝男と別れた後の鮎美の変貌ぶりを見ると納得できる。確かに、凄まじい振れ幅の変貌を遂げた“アユメロ”こと鮎美とサラリーマンである勝男が街中でたまたま出会すことがあり得そうな場所となると高円寺になるのだろう。

それにしても勝男の化石ぶりには目を見張るものがある。少しのライフハックも当たり前に皆が使う調味料さえも「手抜き」と一刀両断してしまう。「ほとんど冷凍食品の弁当は手作り弁当ではなく解凍弁当」、「市販のルーを使ったカレーは野菜を切るだけで手料理とは言えない」、「昼からパンを食うのでない、米を食え」など、令和の時代にものめずらしすぎるメンズである。

自分で作った弁当を持参する後輩男子がいくら「うちでは料理は俺の担当」「俺が料理好きなんです」と話したところで、「彼女が料理作ってくれないんだな」と相手の話を最後まで聞かずに決めつける。自分のあまりに古めかしい価値観にガチガチに縛られ、それ以外を受け付けない。なぜ勝男がこんな価値観のまま世に放たれてしまったのかと言えば、亭主関白な父親とそれを受け入れてきた母親の影響もあるのだろうが、何より彼がこれまでモテ続けてきたからだろう。鮎美と付き合うまで女性から好意を寄せられ続けてきた勝男は、時代錯誤すぎる価値観を修正される機会にも恵まれず、そのまま社会人になってしまった。学生時代から彼の中で好きなタイプは今と変わっていないのだろうが、さすがに当時は第一声に「美味しい筑前煮が作れる子がタイプ」とは言わなかっただろう。それが同棲や結婚などを意識する年齢になり、彼の古風すぎる価値観が炸裂し周囲がドン引きするという構図が繰り広げられる。

「愛情」という名の下に相手から惜しみない、見返りを求めない労力が提供されて然るべきだと信じてやまない無邪気でデリカシーのない勝男だが、そんな彼にもだんだんと憎めない側面も見えてくる。

確実に自分のことなのに、「自分の友人の話」というテイで鮎美との別れ話を後輩に聞かせ、そこで得られた「自分で筑前煮を作ってみたら元カノの気持ちがわかるのでは?」というアドバイスになんだかんだ従ってみる。さらになぜかその筑前煮を会社に持参して後輩にも食べてもらい感想を求めるところも、実際には面倒すぎる先輩には違いないが、ここまでくると不器用すぎて1周回って愛らしくもある。






















