夏帆×竹内涼真『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は“異世界転生”もの?

『じゃあつく』は“異世界転生”もの?

 “異世界転生の物語”は、ライトノベルやアニメのものだけではない。

 そう改めて感じさせるのが、10月7日から放送が始まるTBS火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』だ。

 ハイスペックな男性との結婚を目指す女性・山岸鮎美と、その彼氏であり「料理は女性が作るのが当たり前」という価値観を持つ海老原勝男の別れと再生を描く本作。

 なぜ本作の実写化が企画されたのか。そこには、“人間はやり直せる”というメッセージが影響しているように思えた。

 従来のドラマであれば「第1話だけ登場する、ちょっと嫌なヤツ」で終わりそうな亭主関白のハイスぺ男・勝男が、鮎美にプロポーズを断られるところから物語はスタートする。

 これまで勝男に尽くしてきた鮎美が別れによって新たな出会いを得て、過去なんて忘れるような輝かしい物語が描かれる……と思いきや、それは違う。なんと勝男が変わり始めて、2人とも救われる道へ向かうようなのだ。

 異世界転生の多くの作品では主人公は不幸な運命から転生するため、自分の価値観を鮎美に押し付け、感謝のなかった勝男が救われるのは、厳密には少しずれているのかもしれない。しかし、鮎美に振られたことによって自分の価値観の狂いに気づき、成長していく主人公・勝男に新たな人生の機会が与えられていく展開は、異世界転生と共通する要素といえるのではないか。

 加えて、変化するのは勝男だけではない。勝男に真摯に尽くしていたにもかかわらず、料理に小言を言われ続けた鮎美。どちらかといえば不憫な立場にあった彼女は、これまで作り上げた清楚なイメージを壊すかのように新たな世界に飛び込み、これまで大切にしてきた勝男に別れを告げる。

 鮎美にとっての異世界は、勝男から離れてみると、街中のすぐ身近にあったのだ。そして彼女は、その空間と新たな人たちから気づきを得たが故に、髪を宇宙人のような色に染めるほどの生まれ替わりを果たしていく。

 思えば“やり直し”の概念は近年のひとつのトレンドでもある。例えば、2023年放送の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)は、平凡な日々を送っていた主人公のタイムリープを描く。また、同じく日本テレビ系列で2021年に放送された『コントが始まる』も、売れなかった芸人人生からリスタートしていく物語の作品だ。令和に生きる私たちが無意識に求めているのは、きっとこれらの作品が感じさせてくれるような救いなのだろう。

 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の主人公2人の名前には、鮎美、海老原、勝男(カツオ)と、幸せな家庭の物語の金字塔『サザエさん』を連想させるような海や川に関する単語が入る(海老原は、「海老カツ」と調理済みのあだ名で呼ばれているが)。一度は道が分かれた勝男と鮎美は、お互いに変化しながら、新たな幸せの形をどう模索していくのだろうか。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の画像

火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

谷口菜津子による同名漫画を原作としたロマンスコメディ。「料理を作る」というきっかけを通じて、“当たり前”と思っていたものを見つめ直していく男女を描く。

■放送情報
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
TBS系にて、10月7日(火)スタート 毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:夏帆、竹内涼真、中条あやみ、青木柚、前原瑞樹、サーヤ(ラランド)、楽駆、杏花
原作:谷口菜津子『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(ぶんか社『comicタント』連載)
脚本:安藤奎
演出:伊東祥宏、福田亮介、尾本克宏
プロデューサー:杉田彩佳、丸山いづみ
編成:関川友理
音楽:金子隆博
主題歌:This is LAST「シェイプシフター」(SDR)
制作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antaga_tbs/
公式X(旧Twitter):@antaga_tbs
公式 Instagram:antaga_tbs
公式TikTok:@antaga_tbs

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