興収で読む北米映画トレンド
テイラー・スウィフト、2年ぶりに映画館を席巻 映画・音楽チャート独占の快挙

今週、思わぬ苦戦を強いられたのが、ドウェイン・ジョンソン主演×A24製作の伝記映画『The Smashing Machine(原題)』だった。実在の伝説的レスラー、マーク・ケアーを肉体改造と特殊メイクで演じ、ジョンソンが新境地を開拓したR指定のドラマ映画だが、週末3日間の興行収入は3345館で600万ドル、ランキングには第3位の初登場となった。
ジョンソンのスター性もあいまって、本作は当初1200万~1500万ドルと予測されていたが、数字はゆるやかに下方修正され、800万ドル程度とみられていた。しかし、実際の結果はそれさえ下回り、『ファースター 怒りの銃弾』(2010年)を下回ってジョンソン史上最も低い滑り出しとなっている。

もっとも本作はヴェネチア国際映画祭やトロント国際映画祭などで高く評価されており、オスカーを含む賞レースへの期待も高まっている。Rotten Tomatoesでは批評家スコア74%・観客スコア78%。ただし、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B-」と賛否両論ぶりをあらわにした。
“ザ・ロック”としてのドウェイン・ジョンソンのファンや、『ワイルド・スピード』『ジュマンジ』シリーズなどのアクションスターとして彼を認知している観客は、少なからず本作に動揺したのではないかといわれている。監督は『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)や『グッド・タイム』(2017年)を手がけたサフディ兄弟の弟、ベニー・サフディ。ジョンソン自身は本作に大きな手ごたえを感じており、サフディとの再タッグ作もすでに動き出している。
製作費は5000万ドル、かつ映画祭参加を含むプロモーションにも一定の金額が投じられていることを鑑みると、初動成績600万ドルというスタートは確かに厳しい。しかし本作は、レオナルド・ディカプリオ主演×ポール・トーマス・アンダーソン監督『ワン・バトル・アフター・アナザー』にも近い立ち位置の、賞レースまで見据えた長期的な結果で判断すべき作品だ。

ちなみにA24は、ブレンダン・フレイザー主演×ダーレン・アロノフスキー監督『ザ・ホエール』(2022年)で、スター俳優の新境地・特殊メイク・R指定のドラマ映画・賛否両論という同じ体験をしたことがある。興行規模こそ異なるが、A24は本作も評判が広まれば興行も軌道に乗ると確信しているようだ。日本配給はハピネットファントム・スタジオ(公開時期などは未定)。
そのほか今週は、前述の『ワン・バトル・アフター・アナザー』が前週の第1位から第2位にランクダウン。週末興収は1112万ドルだが、前週比マイナス49.4%と健闘中だ。北米興収4275万ドル、世界興収1億165万ドルという数字は、ポール・トーマス・アンダーソン監督史上最高のもの。コスト回収の道のりこそ長いものの、やはり長い目で見るべき作品であり、すでに映画の完成度による口コミ効果は出ているとみられる。
第7位には『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の3D版再上映がランクイン。北米2140館で週末興収319万ドル、海外市場を含む世界興収はおよそ1000万ドルと、『アバター』人気の高さを感じる結果となった。ディズニー/20世紀スタジオは、12月公開の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で3度目のメガヒットを狙う。

第9位に初登場した『Good Boy(原題)』は、飼い犬の目線から新居の怪異を描く新感覚のホラー映画。配給のIFC Filmsは予告編の反応などを見て上映規模を拡大し、北米1650館で225万ドルというスタートとなった。Rotten Tomatoesでは批評家92%・観客84%という高評価を獲得。CinemaScoreでは「B」評価となった。日本公開は未定。
北米映画興行ランキング(10月3日~10月5日)
1.『Taylor Swift: The Official Release Party of a Showgirl(原題)』(初登場)
3300万ドル/3702館/累計3300万ドル/1週/AMC Theatres
2.『ワン・バトル・アフター・アナザー』(↓前週1位)
1112万ドル(-49.4%)/3634館/累計4275万ドル/2週/ワーナー
3.『The Smashing Machine(原題)』(初登場)
600万ドル/3345館/累計600万ドル/1週/A24
4.『ギャビーのドールハウス ザ・ムービー』(↓前週2位)
520万ドル(-62%)/3507館(+7館)/累計2160万ドル/2週/ユニバーサル
5.『死霊館 最後の儀式』(↓前週4位)
405万ドル(-40%)/2753館(-330館)/累計1億6780万ドル/5週/ワーナー
6.『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(↓前週3位)
350万ドル(-50.7%)/2547館(-437館)/累計1億2463万ドル/4週/ソニー
7.『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』再上映(初登場)
319万ドル/2140館/累計319万ドル/1週/ディズニー
8.『The Strangers: Chapter 2(原題)』(↓前週5位)
280万ドル(-51.8%)/2690館/累計1069万ドル/2週/ライオンズゲート
9.『The Good Boy(原題)』(初登場)
225万ドル/1650館/累計225万ドル/1週/IFC Films
10.『The Long Walk(原題)』(↓前週7位)
170万ドル(-48.7%)/1930館(-367館)/累計3192万ドル/4週/ライオンズゲート
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年10月6日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W040/
https://variety.com/2025/film/box-office/taylor-swift-release-party-showgirl-box-office-debut-smashing-machine-bombs-1236540485/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/taylor-swift-showgirl-box-office-dwayne-johnson-1236392420/
https://www.hollywoodreporter.com/music/film-tv-music-news/taylor-swift-movie-life-of-a-showgirl-1236369329/
https://deadline.com/2025/10/taylor-swift-box-office-showgirl-1236569790/
https://deadline.com/2025/10/indie-films-opening-good-boy-george-orwell-marc-maron-docs-1236569165/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001995.000000664.html
https://www.billboard.com/music/chart-beat/taylor-swift-life-of-a-showgirl-first-day-sales-debut-week-1236082178/





















