興収で読む北米映画トレンド
『ワン・バトル・アフター・アナザー』PTA史上最高ヒットで北米No.1 『鬼滅の刃』は3位に

9月26日~28日の北米映画ランキングは、レオナルド・ディカプリオ主演&ポール・トーマス・アンダーソン監督の初タッグ作『ワン・バトル・アフター・アナザー』が初登場No.1に輝いた。
本作は、ディカプリオ演じる“挫折した革命家”ボブが、昔の宿敵である軍人ロックジョーによって娘ウィラを誘拐され、娘を取り戻すため再び戦いに臨む。追跡に次ぐ追跡、戦いに次ぐ戦い(ワン・バトル・アフター・アナザー)が幕を開ける――。ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロという名優同士の顔合わせでも話題だ。

北米上映館数は3634館で、週末興行収入は2240万ドル。『ブギーナイツ』(1997年)や『マグノリア』(1999年)、『インヒアレント・ヴァイス』(2014年)などの名作で知られる巨匠アンダーソンだが、従来は小規模公開からスタートすることが多く、のちに拡大公開されても2000館以下の上映となることが通例だった。
したがって本作は、アンダーソン史上ぶっちぎりのオープニング興行収入記録を獲得。過去最高のヒット作である『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)の4022万ドルを超え、キャリアの最高記録を更新するのも時間の問題だ。
海外76市場の興行収入はでも2610万ドルで、世界興収は4850万ドル。製作費は1億3000万ドル(こちらもアンダーソン史上最高額だ)とあって、この結果をどう見るかは意見が分かれるところだ。損益分岐点は世界興収3億ドルとも伝えられているから、北米興収2000万ドルという滑り出しは厳しい数字だというほかない。

もっとも、北米におけるハリウッド映画の興行にはいくつもの要因が複雑に絡み合う。そもそも『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、上映時間162分という長尺のR指定アクションスリラー、しかも既存のIP作品ではなくオリジナル脚本という、現在のハリウッドでは最も集客に苦戦するタイプの映画なのだ。
この野心的な企画に投資したワーナー・ブラザースは、『スーパーマン』や『F1/エフワン』をはじめ、『マインクラフト/ザ・ムービー』、『罪人たち』、『ファイナル・デッドブラッド』、『Weapons(原題)』、そして『死霊館 最後の儀式』とヒット作を連発。今年初めて年間興収40億ドルの大台を突破したスタジオとなった(ワーナーにとってはコロナ禍以前の2019年以来となる快挙)。
こうした経緯を鑑みれば、本作ひとつが苦戦しても、別の作品が問題をカバーしうることは明らか。むしろ、単独では当たりにくい種類の映画をメインストリームに押し出せるのは数々のヒット作があってこそだ。また、本作においてはレオナルド・ディカプリオの存在も言わずもがな大きく、出口調査では観客の41%が「ディカプリオが出ているから」この作品を観たと回答している。




















