『絶対零度』『フェイクマミー』 秋ドラマはライターズルームから羽ばたく若手脚本家に注目

『ぼくたちん家』
10月12日スタートの『ぼくたちん家』(日本テレビ系)は、現代に様々な偏見の中で生きる“社会のすみっこ”にいる人々を描くホーム&ラブコメディ。主演は及川光博、そして及川が恋をする相手役を手越祐也が演じる。
脚本担当の松本優紀は、日本テレビが実に18年ぶりに公募を再開した“日テレシナリオライターズコンテスト”(2023年)から飛び出した脚本家だ。
このコンテストもTBS同様、人材を発掘することに重きが置かれ、受賞者は“ライターズベース”に参加、日本テレビグループの様々なジャンルの企画開発に携わるというもの。同コンテストで審査員特別賞を受賞した松本は、連ドラを担当するのは今回が初であり、ベテランプロデューサー・河野英裕と二人三脚で一から作り上げた完全オリジナルストーリーとなる。
ちなみに、同じく2023年のコンテストで大賞を受賞したのは神谷克麻。受賞作である『217円の絵』は9月30日に火曜プラチナイト枠で放送されたばかり。そもそもテレビドラマ化が前提でなかったこともあり、本作は暴力表現などの上で懸念が大きかったものの、なんとか映像化を実現。日本テレビの“オリジナルコンテンツを生み出したい”という熱量を感じる。
『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(フジテレビ系)
2010年に開始した『絶対零度』シリーズのシーズン5であり、今回は新たに沢口靖子を主演に迎え、特殊詐欺やサイバーテロなどの“情報犯罪”に立ち向かう。
脚本担当は株式会社FILM所属の脚本家3人。FILMはフジテレビ系のライターズルーム(エージェント)であり、同局主催の“ヤングシナリオ大賞”の受賞者が多く所属する。本作の脚本担当の市東さやかは第34回(2022年)、阿部凌大は第35回(2023年)の大賞受賞者であり、これをベテランの鈴木洋介がショーランナー的な立場で統括するという体制であろう。
プロデュースサイドは『絶対零度』シーズン当初からの陣容でシリーズの世界観をしっかりと維持。そして本作は“新章”として“情報犯罪”というまさに現代的なテーマに挑むため、若手脚本家たちによる現代性のある切り口が大いに期待されるところであろう。
“ライターズルーム”はまだまだ試行錯誤の段階ではあるものの、世界を視野に入れた新たなドラマ作りが始まったことは非常に喜ばしいことだ。この仕組みがもたらすストーリーの骨太感と脚本家たちの個性の爆発の融合は、果たしてどんな新しい世界を届けてくれるのか。
この秋は、ベテラン脚本家の圧倒的なストーリーテリングに酔いしれる一方で、若手のフレッシュな感性がキラキラと乱反射する作品たちを熱量高く見守りたい。
























