『あんぱん』“アンパンマン放送開始”で物語は最高潮へ 瀧内公美ら懐かしの面々も登場

NHK連続テレビ小説『あんぱん』129話では、TVアニメ『それいけ!アンパンマン』が放送され、物語はいよいよ大きな転換点を迎えた。
昭和63年10月3日。およそ2年がかりで完成した『それいけ!アンパンマン』がついに電波に乗った。キャラクターたちが画面いっぱいに動き出す光景に、のぶ(今田美桜)は胸をなでおろし、嵩(北村匠海)はようやくここまで来たという実感を抱いているように見えた。

それは子どもたちの笑顔を願い続けてきた日々が、ようやく形になった瞬間。エンディングに流れた「勇気りんりん」のフレーズは、これから始まる長い歴史の第一歩を告げる鐘のように響き渡る。放送が無事に終わると、のぶたちは胸を撫で下ろし、静かに喜びを分かち合った。こうしてアンパンマン、そして“やないたかし”の名は、日本中に広く知られていくことになる。
一方で物語は、懐かしい顔ぶれの再登場という嬉しい驚きも届けてくれた。薪鉄子(戸田恵子)の事務補助員だった世良(木原勝利)、そして黒井(瀧内公美)とうさ子(志田彩良)だ。黒井とうさ子は、自分たちの学校を立ち上げていたのだ。かつての仲間がそれぞれの道を切り拓き、子どもたちの未来に向き合う姿は、最終回目前の今だからこそ胸に響くものがある。そして、街角のテレビで、『それいけ!アンパンマン』放送を見守る草吉(阿部サダヲ)に「ジャムおじさんですか?」と声をかけたのは、嵩の幼少期を演じた木村優来だった。こうした懐かしい面々の登場は、まさに朝ドラ恒例の“総出演”だが、物語が最終回へ向けて大きなクライマックスを迎えつつある寂しさも同時に感じてしまう。

また、蘭子(河合優実)には大きな選択の時が訪れる。八木(妻夫木聡)から手渡された手紙を開くと、そこには丁寧に収められた指輪が入っていた。「帰ってきたら、考えてくれ」――八木の言葉を胸に、蘭子は何も言わず微笑み、静かに海外へと旅立つ。その背中には、新しい未来への覚悟と、彼女なりの答えを探そうとする決意がにじんでいた。

アニメの大ヒットもあり、嵩は今や人気漫画家として多忙な日々を送っていた。のぶは彼のスケジュールを調整し、支えることに心を砕いていたが、その姿にはひそかな無理が重なっていた。ある日、のぶが姿を消し、訪ねた先は星子(古川琴音)のもとだった。嵩が帰宅すると、家には星子がいて、のぶが病院に向かったことを告げる。嵩の胸に冷たい衝撃が走る。のぶは嵩の負担を思い、あえて直接は言わずにひとりで病院へと向かっていたのだ。これまで一番近くにいたからこそ、気づけなかったことを素直に悔いた嵩。だがその思いを口にすることで、のぶとの間にはあらためて“寄り添い合う”関係が浮かび上がっていく。

『それいけ!アンパンマン』の放送開始という歴史的瞬間と、のぶと嵩があらためて互いを見つめ直す時間が重なり合った回だった。夢が現実となり広がっていく一方で、すぐそばの大切な存在を見失わないこと。それがそろって初めて、2人の物語もアンパンマンの物語も未来へ進んでいくのだと、今回のエピソードは私たちに教えてくれた。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK





















