何度でもレゼに逢いたい! 『チェンソーマン レゼ篇』はアニメ史に残る“楽しい”破壊作

楽しい! とにかく楽しい! まるで『新世紀エヴァンゲリオン』第弐拾四話「最後のシ者」が100分続くみたいな楽しさだ!
いや、あれは楽しいというより、ツラいとか悲しいとか残酷だとか、そういう回だったんじゃないのかと言いたい方もいるだろう。無論、そういう感情をひっくるめての楽しさである。何しろ今回の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、ボーイ・ミーツ・ガール&ハートブロークン&トータリー・デストロイド・ヒューマンソウルな物語なのだからして。

悪魔と契約を結んでチェンソーマンになる力を得た少年デンジ(CV:戸谷菊之介)は、マキマ(CV:楠木ともり)率いる公安対魔特異4課にスカウトされ、数多くの犠牲を出しながら悪魔を倒し続ける。2022年放映のTVシリーズ版ではサムライソードとの死闘までが描かれたが、初の劇場版となる『レゼ篇』では、原作でも特に人気の高いエモさ満点のチャプター「レゼ篇」をまるごと映像化。デンジが喫茶店で働く謎の少女レゼ(CV:上田麗奈)と出会い、淡いひと夏の恋物語が展開する。もちろん『チェンソーマン』なので、その恋は一筋縄ではいかない。「初恋は爆発だ!」的なフレーズが脳裏に何度もよぎるような、凄絶極まる都市破壊バトルへと雪崩れ込む。

監督は、TVシリーズ版ではアクションディレクターを務めた𠮷原達矢。原作ファンの誰もが待ち望んでいた、妖艶かつ発火性抜群な悪魔ボムの大暴れを、劇場版ならではのリミッター全解除バイオレンスアクション活劇として見事に映像化している。特に後半は、TVでやったらほぼ全カットになんらかの修正が入りそうな(だから残酷描写にヨワい人や、光過敏性発作になりやすい人は要注意)爆発炎上クラッシュ&スクワッシュ映像が怒涛のように展開。これは映画のかたちを借りた災害体感アトラクションではないかとすら思えてくるが、映画館の客席からはとりあえず安全な状態で眺められるので、安心してほしい。

前半のロマンティックな恋愛劇パートの丁寧な演出も効いている。初映像化となるレゼの蠱惑的魅力も、すでに原作マンガで恋に落ちたファンにも納得のいく描写だろう。TVシリーズ版で中山竜監督が作り上げたタッチも尊重しつつ、藤本タツキ原作の味わいを的確に拾い上げようとするバランスの良さは、今回の作品全体に感じるところだ。ちなみに個人的にはTVシリーズ版も大好きだった。特に第9話「京都より」は何度繰り返し観たことか知れない。

TV版でも、チェンソーマン=デンジ=戸谷菊之介が「ギャハハハハ!」と狂気の笑い声をあげながら破壊の限りを尽くすアクション描写がとにかく楽しかったが、今回はその魅力が極まっている。アタマの悪さとテンションの高さではデンジに引けを取らないビーム(CV:花江夏樹)という相棒を得て、より過激さとバカバカしさは倍増。バカゆえに誰の想像力も追いつかない奇策で最強最悪の敵に立ち向かっていくクライマックスは、制作会社MAPPAならではのパワー&スタミナに溢れ、アニメ史に残る痛快さだ。TV版から続投する牛尾憲輔の音楽も絶好調で、師・石野卓球が手がけた『MEMORIES』(1995年)エンディング曲「IN YER MORY」を彷彿させるような音色も時々聞こえてくるのが、アニメファンにはたまらなく嬉しい。





















