『ちはやふる-めぐり-』を通して目の当たりにした“奇跡” 歴史の一部となった永遠の祈り


また、第10話において、同じ場所で、大会を終えた凪とめぐるが出会う時、雲の隙間から月が覗いて、その下で、2人は言葉を交わし合い、幼い頃の続きのように、手を繋いで歩く。それは、第5話終盤の凪とめぐるが忘れ物のタオルを巡ってつかの間言葉を交わす場面に繋がる。その時のめぐるが〈めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな〉を思うことで、紫式部の「懐かしいあの人に久々に会えたかと思ったら、すぐに去ってしまったよ。まるで月が雲に隠れるように」という思いが、彼女の心情に重ねられた。でも、雲が月を隠すこともあれば、雲の隙間から月が顔を出すこともある。凪がめぐるとの試合中「あれから私の時計は止まったまま」で「かるたが一番楽しかった時、それは今」だと思った時、彼女とめぐるとの時間が再び動き出したことが分かるように、ここでも青春は「時間」を軽々と越えて見せるのである。
そして誰かが誰かを思う、あるいは、自分や仲間を信じる、時を越えた切実な「祈り」は作品全体を包み込むのだ。第9話の太一(野村周平)からの「青春は時間を表した言葉じゃなかった」という投げかけに対し、第10話で風希(齋藤潤)が「どう生きるかってことなんでしょ」と返す。それを太一が驚いた顔で見つめ、頷く。

「10年前」である映画版で太一が師匠・原田(國村隼)に言われた「青春全部懸けてから言え」から派生した言葉に対し、今の高校生である風希が実感を通した返事を返すことで、映画三部作、そして本作を含めた作品全体の時の流れが霧散して、視聴者はそこに「永遠」を見る。
「歴史の敗者が集められた」という百人一首に込められた人々の思いが、さらには競技かるたの世界に魅入られたすべての学生たちの思いが、大きな歴史の一部となってそこにある。その奇跡を、本作を通して私たちは、目の当たりにしたのだと思う。
2016年から2018年にかけて公開された映画『ちはやふる』シリーズの10年後の世界を舞台にした作品。廃部の危機にある梅園高校・競技かるた部の藍沢めぐるが、顧問として赴任してきた大江奏と出会い、成長していく。
■配信情報
『ちはやふる-めぐり-』
TVer、Huluにて配信中
出演:當真あみ、原菜乃華、齋藤潤、藤原大祐、山時聡真、大西利空、嵐莉菜、坂元愛登、高村佳偉人、橘優輝、石川雷蔵、瀬戸琴楓、髙橋佑大朗、藤枝喜輝、大友一生、漆山拓実、上白石萌音、内田有紀、要潤、榎本司、富田靖子、高橋努、波岡一喜、髙嶋政宏
ショーランナー:小泉徳宏
監督:藤田直哉、本田大介、松本千晶、吉田和弘
脚本:モノガタリラボ(小坂志宝、本田大介、松本千晶)、金子鈴幸
プロデューサー:榊原真由子、巣立恭平、中村薫、平田光一
企画・プロデューサー:北島直明
チーフプロデューサー:松本京子
音楽:横山克
主題歌:Perfume「巡ループ」(UNIVERSAL MUSIC LLC)
制作協力:ROBOT、ウインズモーメント
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/chihayafuru-meguri/
公式X(旧Twitter):https://x.com/chihaya_koshiki






















