大森元貴、『あんぱん』経てさらなる進化 “音楽への熱い想い”が芝居にもプラスに

NHK連続テレビ小説『あんぱん』で、作曲家いずみたくをモデルにしたキャラクター「いせたくや」を演じているのは、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴。
大森の芝居は、指先の伸ばし方、眉や目、口の動かし方など細かい部分まで抜かりがない。とくに音楽にまつわるシーンでは、目の輝きや身体の動きに、大森が本来抱えている「音楽への熱い想い」が宿っていく。
いせは、眉を一文字に寄せる瞬間もあれば、喜びを全身で表すように口元がぱっと開くこともある。その一方で、自身の離婚歴を語る場面では、声が沈み、どこか自信のない表情を見せる。そのギャップが、いせたくやという人物に奥行きを与え、見る人の心を揺さぶっていく。
いせは、ユーモラスでありながらも、どこか品がある。すっと伸びる指先と、キュッとしまった口元は、どこか美しい。一度目にしたら忘れられないほどのインパクトを放つ存在ではあるものの、「ただのコミカルな演技では終わらせない」という、大森の美学も感じられた。
きっと大森は、ただ「演じている」のではない。いせたくやが抱えてきた背景、そして心の奥にある想いを、表現者として「届けよう」としているようにも見えた。それは役を演じる彼自身が、ミュージシャンである以上に「表現者」だからだろうか。
本記事では、大森元貴が『あんぱん』で見せる演技の魅力について、じっくりと迫っていきたい。

いせは、第91話の放送で初登場し、初々しい学ラン姿を披露する。「いせたくやです!芝居と音楽が好きです!」と、一点の曇りのない瞳で語る青年は、眩しいほどに清々しい。初めて彼の顔を見た瞬間、「新人の俳優だろうか、それとも……」と戸惑ったものの、白い肌と丸い輪郭には見覚えがあった。一体、彼は誰なのか。まじまじと覗き込んで、ようやく大森だと気づいた。
いせは、少年のようにピュアで真っ直ぐなキャラクター。音楽を心から愛し、自分の夢を「形」にすることに情熱を注いでいく。時には「キャン、キャン、キャンメ〜ロ〜」と、音楽への情熱が抑えきれず即興で歌い出すいせの姿も。
その振る舞いは一見、自由奔放な人物としても映る。けれども彼の心の底には、周囲を笑顔にしたいというまっすぐな思いがある。いせが自分の歌に喜ぶ人々を見つめる表情は、いつもどこか誇らしげで、嬉しそうだ。
いせと嵩(北村匠海)は、共に「誰かを楽しませたい」という信念を持つが、そのアプローチは実に対照的。嵩が葛藤しながら前進するタイプなら、いせは自分の想いに素直で、まっすぐに相手へ伝えていく。お互いに違うタイプだからこそ、手と手を取り合うことで「足りないものを補い合える」のかもしれない。
いせは、嵩の「作詞」における才能を、心の底から信じている。嵩が迷う時も、諦めずに「一緒にお仕事がしたい」と声をかけていく。

いせはいつも、嵩の迷いを払うかのように、彼に向けて指先をすっと伸ばす。そして、「あなたに、詩を書いて欲しい」と、まっすぐに思いを伝える。嵩は、いせの澄んだ瞳を見て少しずつ心が動いていき、やがて「作詞」のお仕事に携わるようになる。いせと交流を重ねるうちに、嵩の瞳には次第に輝きが生まれていく。
嵩を演じる北村は、9月12日にNHKで放送された『あさイチ」では、ゲストとして登場。その中で、大森への想いを余すことなく語っていた。北村は、その中で大森のことを「アドリブ大魔人」と呼び、彼の演技を大絶賛。
北村は、大森の演技について「ドレミのドにもいろんなドがあるように、彼は色んな角度からアドリブを投げてくるから面白い。早く、彼とまた一緒にお芝居をしたいと思えるほど魅力的な役者です」と語っている。
北村が話していたように、本作の中では大森のアドリブと思われる仕草がいくつか登場する。たとえば、いせが嵩に「ちょっと前に、声がでなくなった時があって……。でもその時に、メロディがわーって浮かんできて。」と、目を閉じ、左手を大きく動かしながら思いを伝えるシーンがある。




















