『九龍GR』『ひらやすみ』など アニメ化&実写化の同時進行が映像界のトレンドに?

アニメ化&実写化の同時進行がトレンド?

 『九龍ジェネリックロマンス』がアニメから映画へとバトンを繋げた一方で、実写映画が公開されて好評を博したのちにアニメシリーズの放送が決定したのが、和山やまの漫画『カラオケ行こ!』だ。

TVアニメ『カラオケ行こ!』ノンクレジットOP | Ayumu Imazu「HOWL」

 2024年に公開された実写映画では、合唱部の部長を務める中学3年生の岡聡実をオーディションで抜てきされた齋藤潤が、カラオケで歌のレッスンを聡実に頼み込むヤクザの成田狂児を綾野剛がそれぞれ演じており、ふたりの不思議な関係性が現実の世界に立ち上がった。

 また、野木亜紀子が脚本を務めるなかでオリジナルのシーンが追加されたり、新キャラクターが登場したりと、いわゆる原作を忠実に再現するストーリー展開ではなかったものの、小気味いいテンポの会話劇やシュールとコミカルが共存する世界観は健在。実際に演じるキャスト陣が全力で歌唱することで、可笑しさや切なさが歌に乗っかるのも実写の良さだ。

 逆にアニメシリーズは、比較的原作漫画のストーリーに準じており、映画とはまた異なるシュールな魅力が詰まっている。オリジナルエピソードとなる第5話の放送も決定しており、原作ファンにはたまらない映像化と言えるだろう。ラストで物語のキーとなるX JAPANの「紅」を聡実が歌い上げる場面は、実写もアニメも共通して感情がほとばしるすばらしいシーンに仕上がっていた。

 漫画原作の映像化は往々にして批判されることも少なくない。しかし、アニメと実写で役割を分担することで、それぞれの得意とする表現に磨きをかけられるメリットもある。

 アニメでは漫画のキャラクターやストーリーを忠実に再現することで、原作ファンからの期待に応えつつ、アニメーションならではの表現によって原作にあるフィクショナルな演出も再現しやすい。一方、実写版では演じるキャストや物語の舞台となる場所が現実と地続きに存在していることから、キャラクターが過ごす日常や作品の雰囲気を身近に感じられる。実際、同時進行することによって、どちらかに偏ることなく作品の間口を広げることもできるので、アニメと実写作品をひとつのメディアミックスとして楽しんでいる人も多いのではないだろうか。

『ひらやすみ』©︎真造圭伍/小学館

 特に『ひらやすみ』のような人間関係を主軸にした日常作品は、実写でもアニメでも原作の魅力となる世界観を引き出しやすい。さらに、物語が一本道ではなく広がりがあるので、無理にストーリーを引き伸ばす必要のない“持続性”があり、オリジナルシーンを違和感なく追加できるメリットもある。

 『ひらやすみ』は東京の阿佐ヶ谷を舞台にしている作品でありながら、どこか牧歌的で現実の過酷さや忙しなさを忘れさせるような緩やかな空気が流れている。まさに今の時代に摂取したい穏やかな作品なので、まずは先行して放送される夜ドラ『ひらやすみ』の続報を楽しみに待ちたいところだ。

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