吉沢亮らキャスト陣の“全力”は必見 『国宝』と正反対の『ババンババンバンバンパイア』

7月4日から、吉沢亮主演作『ババンババンバンバンパイア』が公開された。主演は、『国宝』の演技が高く評価されている吉沢亮。『国宝』とは真逆のテイストで、吉沢がコミカルな演技を見せていることでも話題を呼んでいる。
本作では、登場人物たちがそれぞれ「勘違い」を重ねていく。その思い込みが観ていて清々しいほど突き抜けており、役者たちも声・表情・体を余すことなく使って、振り切った演技を見せている。作中ではドラマ、アクション、ミュージカル、お笑いなどいろんな要素が詰め込まれており、構成や見せ方も巧みで、気がつけばあっという間に120分が終わっていた。

肩の力を抜いて、思いきり笑える映画だった。そして、笑いに飢えている時に、また観たいと思える映画だった。今回の記事では笑い、そして役者たちの「集大成ともいえる演技の数々」を楽しめる『ババンババンバンバンパイア』の魅力について紹介していく。
物語は、バンバイアハンターに命を狙われ、瀕死の状態を彷徨っていた森蘭丸(吉沢亮)が、幼少期の立野李仁(子役:田村奏多)と出会うところからスタート。無垢で穢れのない李仁に惹かれ、蘭丸は彼の家が経営している銭湯「こいの湯」で働き始める。
蘭丸は普段はクールだが、15歳の立野李仁(板垣李光人)への思いが昂ると急に「貴様ァァ!」「スギュゥン!!」と叫び始める。落ち着いたイケメンボイスから、急に予期せぬ「高音ボイス」が飛び出すというギャップが面白くて、笑いをこらえるのに必死だった。

劇中では、李仁を演じる板垣李光人の魅力も光っていた。李仁の瞳は少女漫画から飛び出てきたかのようにキラキラと輝いており、とってもキュート。口をきゅっとすぼめて、甘えたような声で「森さぁん」と蘭丸を慕う姿は、まるで小動物のよう。まさに、蘭丸がすべてを手に入れたくなるような「穢れなき純真無垢な少年」を瑞々しく演じ切っていた。
そんな李仁に変化が訪れたのは、片思い中の篠塚葵(原菜乃華)と森が接近していることを知った時のこと。その途端、森を見る李仁の目から光が奪われていたのを感じ、ゾクりとした。

この瞬間、李仁を演じる板垣が映画『ブルーピリオド』で、矢口八虎(眞栄田郷敦)のライバル高橋世田介を演じていた時のことを、ふと思い出した。映画の中で、高橋は矢口に向かって「お前なんて、人に合わせるのが得意で器用なだけ!」と心の叫びをぶちまけるシーンがある。あまりにも衝撃で、今でもずっと覚えていたはずなのに、李仁とは真逆のタイプすぎたからだろうか……。このシーンになるまで、実は李仁を「板垣李光人」が演じていたことすらすっかり忘れていた。
演技の幅広さは、李仁が恋をする葵を演じた原からも感じた。原が演じる葵は、蘭丸と初対面の時にシートマスクをつけており、本来であれば表情がわかりにくいはずだ。シートマスクの穴からのぞく瞳は大きく見開いており、全力で「驚き」を表現していた。

原は、目の輝きを「瞬発的に操る力」に長けている。李仁には友人としての好意は感じるものの、どこか一歩引いているような目線を送っていたが、蘭丸を目の前にした途端、瞳孔が開いて目がきらりと少女漫画のように光り輝いていく。蘭丸が目の前にいなくても、話題に出るだけで「蘭丸様が?」と、ぱっと目を輝かせる。
映画では、蘭丸にぐいぐい迫っていく葵の姿を観たせいか、朝ドラ『あんぱん』(第15話)を観た時には、恋に臆病なメイコを演じる原を観て、そのギャップにもう一度ドキりとしてしまった。




















