『Newパンスト』で話題の“逆作画崩壊”を考察 絵柄にみるワールドワイドな文化的背景

2025年夏アニメも折り返して後半戦に入った。そのうち本稿では『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』(以下『Newパンスト』)から、新キャラクターの天使/ポリエステルとポリウレタンの変身シーンでも話題の“逆作画崩壊”について考察してみたい。
“逆作画崩壊”の魅力はルック(絵柄)によるギャップ
『Newパンスト』は、前作2010年の『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』の続編としてファンに熱望されていた。実に15年ぶりの復活ながら、海外映画をモチーフとするなど相変わらず(安心?)の攻めた内容が健在だ。放送や配信でも、それぞれオリジナル版とCENSORED版が用意されており、違いを観比べることができる。
前作2010年の『パンスト』でも、変身シーンが“逆作画崩壊”として話題になっていた。この変身シーンは2D作品においては「変身バンク」と呼ばれる。「バンク」とは、キャラクターや背景などの素材を再活用することを意味した用語で、定型化している演出の際などに用いられてきた。制作効率としても利点があるが、最近は3D作品における素材管理の「アセット」という用語に集約されていく傾向にもあるようだ。
ただ“逆作画崩壊”と言っても、実際に作画が“崩壊”しているわけではない。実際の“作画崩壊”は、作品制作の遅れにより、キャラクターの原画およびその間を埋める動画(中割)のルックなどが不安定で、クオリティーを維持できていない状態を指す。『Newパンスト』の“逆作画崩壊”は、作品のルックが基本的にカートゥーンであるところ、変身時にアニメが間に挟まることに由来する。つまり、ルックのギャップが魅力になっているのだ。
例えば『Newパンスト』のEPISODE3「ボディカード」がカードゲームの回であることにちなむと、2015年にカートゥーン・ネットワークで放送された『カード・バトルZERO』は、カートゥーンの世界にアニメの世界のキャラクターが登場する設定だった。この『カード・バトルZERO』は“逆作画崩壊”ではなく、異なるルックのキャラクターが混在している面白さがある作品になっていた。
なおカートゥーンでは、1枚1枚キャラクターを作画するほかに、何パターンか描いたキャラクターを身体の各パーツに分けて併用することもよくある。これは先述した「バンク」や「アセット」といった素材の再活用や管理の話とも関連するが、カットアウト(切り絵)という制作方法である。ゲームやVTuberなどにおいてもよく見られる制作方法で、パーツアニメーションとも呼ばれている。
また『Newパンスト』のEPISODE9「昨日に向って撃て!」も異なるルックとして、カートゥーンのキャラクターが昔のアメコミのようなキャラクターと混在していて面白い。アメコミのキャラクターが登場する作品としては、例えば2024年に米国マクドナルドが公開した『ワクドナルド』がある。こちらは、日本の作品に架空の店舗「ワクドナルド」が登場していることにちなんで制作された。
さらに面白いのは、この『ワクドナルド』は日本のスタジオぴえろが制作している点である。『Newパンスト』も日本のトリガーが制作しているが、必ずしも日本の制作スタジオがアニメのルックのみで制作しているわけではない。逆にこれまで海外の制作スタジオがアニメのルックを完コピしようとしても、『カード・バトルZERO』に登場するルックがアニメのキャラクターのように、どことなく違和感が残ってしまいがちだった。




















