加藤清史郎の“大人”の演技がすごすぎる “二面性”を実現させた『放送局占拠』での演技力

加藤清史郎、『放送局占拠』で“大人”の演技

 芦田愛菜や加藤清史郎、少し上の世代に目を向ければ、福原遥や伊藤沙莉、神木隆之介、志田未来。一時代を築いた子役たちが20代から30代になり、それぞれが成熟した芝居をみせている。今回は、『放送局占拠』(日本テレビ系)で伊吹裕志(般若)役を演じ、作品によって異なった印象を視聴者に与える加藤清史郎について言及したい。

 加藤は、幼い頃から演技力の高さを評価されてきた。大河ドラマ『天地人』(NHK総合)の主人公・直江兼続の幼少期を演じたときには、幼さからくるかわいらしさと含みを持たせた表情、自然な泣きの演技で大きな反響を集めた。特に、親元から離れ修業することになった際、本心を問われた時に答えた「わしはこんなところ来とうはなかった!」というセリフに込められた幼い子どもの切実な本音に胸を打たれる視聴者が続出。その年の新語・流行語大賞にノミネートされたほどだった。

 2009年には、トヨタ自動車のCMキャラクター・こども店長として一世風靡。2011年には、映画『忍たま乱太郎』で主演を務めた。10代になってからもコンスタントに、映画やドラマ、舞台に出演し、2015年には六本木歌舞伎『地球投五郎宇宙荒事』で、歌舞伎にも挑戦。幼い男の子特有のかわいらしさと高い演技力で、知らない人はいないといえるほど子役として活躍していた人物だ。

 幼いながらも一つ一つの作品の中で自分の芝居を俯瞰し、成長を繰り返してきた加藤は、高校の3年間は日本を離れ、イギリスへ留学。イギリスでは演劇学校にも通い、外国で鍛錬を積んだ。

 3年間の成果だろうか。帰国後となる2020年以降の加藤の活躍は、目を見張るものがある。ドラマ『モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜』(テレビ朝日系)や映画『はたらく細胞』では、爽やかな好青年を、ドラマ『ドラゴン桜 第2シリーズ』(TBS系)では、少し情けない印象ながら、後半はラップではっちゃけるというギャップのあるユーモアある役柄を演じた。

 そして、ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)では、問題児集団のリーダー格であり、いじめの首謀者である相楽琉偉役として出演。いわゆる悪役から、自分の罪と向き合い、心から反省するまでの変化を丁寧に演じ、血の通った人物として相楽を作り上げていた。パブリックイメージを覆す役柄に衝撃を受けた人も多かっただろう。加藤は闇を抱えたキャラクターも演じられると証明する作品となった。

 かわいらしさと高い演技力で引っ張りだこであった子役から、役と向き合い丹念に表現していく実力派俳優へと進化しつつある加藤。こういった経歴を踏まえれば、主人公・武蔵(櫻井翔)を尊敬する警察官と敵である武装集団のリーダーという二面性を表現する複雑な伊吹役は、演じるべくして演じた役柄といえるだろう。蓄えてきた引き出しが放出されているようなイメージを持つ。

 『放送局占拠』第6話は、淡々とした口調で武蔵を追い詰めていく姿を見せる一方で、回想で見せた武蔵や裕子(比嘉愛未)と過ごす場面では、真面目で人懐っこい表情を見せる場面も。この切なさのある二面性からは、般若となった伊吹の覚悟がうかがえた。

 現時点の伊吹は、強い怒りと恨みに突き動かされながらもどこか冷静だ。今後、伊吹の感情が揺さぶられるような場面があれば、さらに加藤の演技力の高さを味わえるかもしれない。

 着々と役柄の幅を広げている加藤が、伊吹役を乗り越えた先でどんな姿をみせてくれるのか。

『放送局占拠』の画像

放送局占拠

『占拠』シリーズ第3作目。『大病院占拠』では鬼、『新空港占拠』では干支をモチーフにしたお面が印象的だった武装集団だったが、『放送局占拠』では、妖怪のお面をかぶった妖が500名の人質をとり、放送局を占拠する。

■放送情報
『放送局占拠』
日本テレビ系にて毎週土曜21:00〜放送
出演:櫻井翔、比嘉愛未、ソニン、瀧内公美、ぐんぴぃ、高橋克典、加藤清史郎、曽田陵介、吉田芽吹、戸次重幸、福澤朗、片岡礼子、齊藤なぎさ、山口大地、真山章志、亀田佳明、北代高士、宮部のぞみ、菊池風磨
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
演出:大谷太郎、茂山佳則、西村了
脚本:福田哲平
音楽:ゲイリー芦屋
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/dbs3/
公式X(旧Twitter):https://x.com/dbs_ntv

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