興収で読む北米映画トレンド
シドニー・スウィーニーの炎上騒動は新作不振に影響したか? 話題作『Weapons』が北米V2

8月15日~17日の北米映画週末ランキングは、話題沸騰のホラー映画『Weapons(原題)』が2週連続No.1に輝いた。
週末3日間の興行収入は2500万ドルで、前週比マイナス42.5%。今年は『罪人たち』が2週目に前週比マイナス4.8%という圧倒的な数字を叩き出しており、そのインパクトには及ばないが、ホラー作品は2週目に数字が急落することも多い。マイナス40%台でも十分驚くべき結果だ。

午前2時17分、とあるクラスの生徒全員が姿を消した――。謎の集団失踪事件をめぐる本作は、ザック・クレッガー監督のオリジナル脚本を映画化したもの。製作費3800万ドルに対し、北米興収は8904万ドル、世界興収は1億4874万ドルという大ヒットぶりだ。ワーナーは早くも前日譚企画の準備に入ったと報じられている。
今週注目の初登場は、ボブ・オデンカーク主演のアクション映画『Mr.ノーバディ2』だが、実はもうひとつ気になるトピックがある。『恋するプリテンダー』(2023年)や、日本では7月に公開された『IMMACULATE 聖なる胎動』(2024年)のシドニー・スウィーニーが主演した現代西部劇『Americana(原題)』が大苦戦を強いられていることだ。
8月15日に北米1110館で公開されたが、週末興収はわずか50万ドルで、初登場16位というスタート。1000館クラスの公開規模ではまれに見る大クラッシュと言っていい。
本作は闇のマーケットに流れたネイティブ・アメリカンの遺物を、スウィーニー演じるウエイトレスとポール・ウォルター・ハウザー演じる元軍人が追う犯罪スリラー。骨董商や犯罪者、先住民族、そして謎の過去を持つ女性を巻き込んで激しい争奪戦が繰り広げられるが……。監督はドラマ『ポーカー・フェイス』のトニー・トスト。

撮影は2022年に実施され、2023年にライオンズゲートがSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト映画祭)で配給権を獲得していたが、2年にわたり劇場公開されていなかった。スウィーニーの人気が高まったタイミングでの公開となったものの、残念ながら劇場での成果は厳しいものだ。
今週『Americana』の不発に注目するのは、スウィーニーがジーンズブランド「アメリカンイーグル」の広告で大炎上したばかりの新作だからだ。同社のジーンズ(jeans)と遺伝子(genes)を掛けたキャッチコピーは「シドニー・スウィーニーは優れた“ジーンズ”を持っている」。スポット映像では、スウィーニー自身のナレーションで「遺伝子は親から子へ受け継がれ、髪の色や性格、目の色さえ決定づける。私の“ジーンズ”は青い」と語られた。
この広告はSNSを中心に、「白人至上主義や優生学を推進するものだ」「ナチスのプロパガンダ的だ」と激しいバッシングを招いた。報道でスウィーニーが共和党支持者であると伝えられたあと(政治思想は個人のプライバシーではなくなったのだろうか)、ドナルド・トランプ大統領が「シドニー、がんばれ」とSNSに投稿する事態にさえなっている。
アメリカンイーグルは、スウィーニーを起用した広告は「常にジーンズについてのもの」だと言外の意図を否定。「私たちはこれからも、誰もがAE(アメリカンイーグル)のジーンズを自分らしく、自信を持って着こなすことを祝福します。素晴らしいジーンズは誰にでも似合います」との声明を発表した。スウィーニーも一連の出来事にはまったくコメントしていない。
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