興収で読む北米映画トレンド
『ファンタスティック4』北米V2も期待に及ばず MCUの“微妙”な現状とは?

近年、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の新作映画が公開されるたび、この現状をどのように捉えるかが問われているのだと考えるようになった。8月1~3日の北米映画週末ランキングは『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は2度目のNo.1を獲得。週末興収は4000万ドルで、下落率は前週比マイナス66%だ。
さて、この結果をどう見るか。「前週比マイナス66%」という数字は確かに大きい。北米オープニング興収が1億1764万ドルという好記録かつ、批評家と観客の評価も高く、大きな口コミ効果が見込まれていたことを鑑みると、これは(アナリストの予想を下回ったことからもわかるように)事前の期待に及ばない結果だ。
しかしながら昨今のスーパーヒーロー映画の場合、前週比マイナス60%台という数字は、もはや珍しくないどころか「よくあること」だ。7月11日に公開されたDC映画『スーパーマン』は2週目に前週比マイナス53%という数字を出し、MCU映画『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)や『サンダーボルツ*』(2025年)よりも優れた推移となったが、もはやこちらのほうが異例なのである。
あくまでも事実ベースで話を進めると、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は現時点で北米興収1億9842万ドル、海外興収1億7030万ドルで、世界累計興収は3億6872万ドル。今年公開の『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』と『サンダーボルツ*』の成績を上回ることは確実で、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023年)も超える勢いだ。すでに製作費2億ドルの回収も視野に入っている。世界興収5億ドルを突破した『スーパーマン』にはかなわなくとも「不調」と言える数字ではない。
そもそもファンタスティック・フォーは、コミックではレジェンド級のスーパーヒーローチームだが、残念ながら映画版ではこれまで大成功を収められずにおり、必ずしも有利なネームバリューがあるわけではなかった。しかも今回はMCU参入第1作で、フランチャイズ人気の追い風を受けやすい立ち位置にもない。『スーパーマン』の人気ぶりや、サマーシーズンの後発組ゆえに競合する大作映画が多いことも伸び悩みの理由だろう。
北米メディアの多くは、こうした経緯を抜きにして、公開のちょうど1週間後にあたる8月1日の単日興収を取り上げて「前週比マイナス80%!」というネガティブな報道を行った。確かにショッキングな数字ではあったが、週末3日間の成績は最終的に「よくある」結果に落ち着いており、また前述の通り全体の推移は悪くない。いささかオーバーかつ勇み足な報道だったと言わざるを得ないのである。
もちろん、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の2週目の成績からわかることはある。現在のMCUは、新規シリーズの第1作にせよ、あるいは続編映画にせよ、よほどのスマッシュヒットでもない限り、2週目に前週比マイナス60%という下落率を出すことが当たり前になったということだ。しかも、この事態をうまく回避できていた『サンダーボルツ*』でさえ最終興収はふるわず、MCUでもワースト級の結果となっている。
すなわち現在のMCUは、端的に言ってコアなファン以外をうまくつかめていないのだ。熱心なファンは以前と同じく公開直後に映画館を訪れているが、2010年代後半のように、より多様な客層が足を運んでいるわけではない。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)前後にあった「MCUだから観る」というトレンドが失われ、そもそもスーパーヒーロー映画/コミック映画が数年前より注目されなくなった今、いかに新しいファンと観客を獲得するかがカギだ。
『アベンジャーズ』新2部作を控えてのカンフル剤となりうるのは、ついに撮影が始まった『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(マーベル・スタジオとソニー・ピクチャーズの共同製作)。マーベル屈指の人気を誇るスーパーヒーローが約5年ぶりに帰ってくるが、それまでMCU映画は約1年間の休止となる。ここからどのような逆転を仕掛けるのか、あるいは別の方向性を探ることになるのか。























