中川大志と山中聡が初の“二人芝居”に挑む 飯塚健監督と語り合う「コントと音楽」の挑戦

「ここ」でしか体験できないことを追求

――今回は『最低二万回の嘘』というタイトルです。なぜ“嘘”をテーマに選ばれたのでしょうか?
飯塚:テーマというほど意識はしていないんですが、「人が生きて死ぬまでに何回くらい嘘をつくんだろう」と考えたときに、なんとなく「最低2万回」と思ったのが始まりです。小さな嘘って、ほぼ毎日、大体の人がついていると思うんですよね。その中で、今は情報が溢れていて、生活が以前よりも複雑になっている。たとえば1日1時間、他人のSNSを見ている人は、23時間で生きていることになります。しかも、その中にあるものはほとんどが虚実がわからない。そんなことより、もっと大切にしなきゃいけないことは半径5メートルくらいにありますよ、と。この作品では、そういったところを描けたらいいなと思っています。
中川:現状の脚本は読ませてもらっていますけど、監督の“育休明け”というのがすごく感じられる作品で。実は、僕にも姪っ子が生まれたりして、すごく刺さることがたくさんあるんですよね。
山中:僕の第一印象としては、「あったかい本だな」と思いました。
飯塚:本当ですか? 結構、毒を吐きまくっていますけど(笑)。
山中:(笑)。僕は子どもが2人いて、大学生と高校生なんですね。なので、ちょっと懐かしいんですよ。子どもってすぐに大きくなるし、今でも暇さえあれば、子どもの小さな頃の写真をよく見ているので。そういう思いがセリフにも入っていて、「ああ、わかるなぁ」って。
中川:ストーリーに触れないところで言うと、僕は「46歳をやる」と書いてありました。自分でも「どういうこと?」と思いますけど(笑)、聡さんと僕という年齢差がある2人なので、どんな関係性で、どんな役どころなのかは、ぜひ楽しみにしてもらえたらいいなと思います。
山中:大志くんって今いくつ?
中川:27になります。
山中:じゃあ、20個くらい違うんだね。
飯塚:今回最初のお話は、2人の実年齢に1歳ずつプラスした設定で書いています。それからvol.05までと大きく違うのは、役名があるところですね。今まで大志は大志、聡さんは聡という本人の役名でやっていたんですよ。
中川:たしかに!
飯塚:でも今回は、初めて「苗字はどうしよう」「画数はどうだろう」と通常の作品をつくるのと同じように、役名をつけました。
山中:だから最初に読んだときに、「これは僕、どっちをやるんだろう?」と思いました(笑)。
中川:僕は今さら気づきました(笑)。
飯塚:vol.06としてもう一度スタートするにあたって、プロデューサーとは「百年物語を描きたい」という話もしていて。その百年物語の中で、大志には46歳、聡さんには18歳の役をやってもらうときが来る、ということですね。

山中:僕、以前も飯塚監督の作品で、現役学生の中に混じって大学生役をやったことがありましたよね?
飯塚:頭にタオルを巻くか、帽子をかぶればなんとかなると思っているっていう。今回も、同じ手法かもしれないです(笑)。
――(笑)。中川さん、山中さんがお互いに思う、“生の中川大志”、“生の山中聡”の魅力も聞かせてください。
中川:『コントと音楽』では、「隣の客の会話、面白いなぁ」と盗み見しているような感覚になると思うんです。もちろん「見せる」という意識もありますけど、やっぱり役者同士の繋がりが大事になっていくんですよね。その一方で、歌になったら今度はステージに上がって、お客さんに向けてパフォーマンスをする。そこが難しいところなんですが、聡さんにはそのときにお客さんを巻き込む力だったり、バーンッとエンターテインメントにしていくエネルギーがある。そこは聡さんにこれまでいっぱい引っ張ってきてもらったし、歴代の出演俳優たちはみんなそう言うと思いますね。
山中:テレビや映画ではわからないことが、生のライブでは観られる……というよりも、“感じられる”のほうが近いかな。僕はいろんな役者さんと一緒にお仕事しますけど、大志くんはいい子なんですよ。もう、本当にいい子。ここに来ると、それを生で感じられるんですよね。一生懸命だし、人を気遣うこともできる。「中川大志はカッコいいだけじゃないんだぞ」と。僕は初めて一緒にやったvol.02のときからそれをすごく感じたので、みなさんにも大志くんのエンターテインメント性と人間性を感じてほしいなと思います。
中川:もう、ここに来ると丸裸なんですよね。街中での行いとか、普段の生活とか、そのすべてがここに繋がっていると思いながら生きています。もちろん、プロとして一定のクオリティは絶対に出さなきゃいけないけれど、その先にある人間性まですべて見られているつもりで舞台に立たなきゃいけないというか、立ちたいというか。「そこにお金を払ってもらっている」くらいの気持ちですし、包み隠さずに見られるつもりでいないといけないのかなと思っています。
――先ほどから度々お話に挙がっていますが、やはり『コントと音楽』は生バンドでの演奏も大きな見どころです。実際、バンドを背負って歌うというのはいかがですか?
中川:僕にとってvol.02が最初の『コントと音楽』でしたが、バンドを背負って歌うのもあれが初めてだったので、さすがにちょっと飲まれましたね。僕は音楽が大好きでライブに行ったりもしますけど、それまで自分自身に“生もの”の経験がなかったので、圧倒されたし鳥肌が立ちました。
飯塚:舞台もやっていなかったから、正真正銘の初めてだったんだね。
中川:そうなんです。その後、歌も歌うような舞台もやらせてもらいましたけど、やっぱりものすごく贅沢ですよね。もう最高です。今回も音楽の海田(庄吾)さんがどんなアレンジで楽曲を作ってきてくれるのかも楽しみですし、いち俳優がCOTTON CLUBでバンドを背負って歌うなんて普通はありえないことなので、めちゃくちゃ気持ちいいです(笑)。
山中:僕は高校生のときにバンドブームだったんですね。だからアマチュアでやったことはありましたけど、プロの演奏かつCOTTON CLUBでやらせてもらうとなると、やっぱり準備が必要ですよね。最初に出たvol.02の稽古では、バスドラが「ドンッ」と鳴ったときに歌詞が全部飛んじゃって。自分がちゃんとしなければ、迷惑をかけちゃうなと本気で思いました。でも、プロ中のプロの人たちなので、みんな懐が深いんですよ。助けてもらっているし、ちゃんとノせてくれるので、すごく楽しいです。
中川:心強いですし、やっぱり伝染するんですよね。バンドのみなさんは芝居を見た上で音を出してくれるので、会場の雰囲気、僕らの芝居、そして音楽のノリが影響し合うのも、この作品の面白さだと思っています。

――あらためて、『コントと音楽』シリーズを通して伝えたいこと、続ける理由を教えてください。
飯塚:難問ですね(笑)。でも、他のメディアではできないこと、「ここ」でしか体験できないことを追求しているつもりです。映画館で映画を観るのも体験ですが、家で一人で配信を観るのは体験ではなく鑑賞だと僕は思っていて。映画館で多くの知らない人たちと一緒に観ることで、「あ、ここで笑うんだ。俺はよくわからなかったけど」みたいな瞬間がある。それが唯一無二の体験だと思うんです。ここでみなさんに持って帰ってもらえるものは、きっと他にはない体験だと思うので、やっぱりやり続けたいですよね。
――vol.06公演に向けて、中川さん、山中さんからもメッセージをお願いします。
山中:これからどんどん暑くなると思いますが、ぜひCOTTON CLUBに足を運んでいただけたら。まだ稽古は始まっていないんですが、僕たち頑張りますので。きっと、みなさんが思っている以上のものを出せると思うんですね。それは自信があるんです。「あぁ、観に来てよかった」と思えるものに絶対にしますので、ぜひ来てください。待っています。
中川:序盤で聡さんがおっしゃっていたように、この仕事の原点が詰まっている作品だと思います。本当にいろんな要素が相まって、体験として、空間として作り上げる。それをここに集まった、二度と会わないかもしれない人たちと一緒に共有できるというのは、すごく濃厚な時間で、やっぱり楽しいんですよね。きっと周りに話したくなる経験ができるので、ここでしか味わえないエンターテインメントを浴びに来ていただきたいなと思います。
■上演情報
COTTON CLUB 20th Anniversary
『コントと音楽 vol.06「最低二万回の嘘」』
丸の内 COTTON CLUBにて、8月14日(木)~8月27日(水)上演
演出・脚本・選曲:飯塚健
音楽プロデュース:海田庄吾
キャスト:中川大志、山中聡
ミュージシャン:椎野恭一 (ds)、田中佑司(key)、西口明宏(sax)、高橋陸(b)
料金(全席指定):SS席:16,800円、S席:12,800円、A席:9,800円
※8月19日(火)、8月25日(月)は休演日
・8月14日(木)開場17:30/開演19:00
・8月15日(金)開場17:30/開演19:00
・8月16日(土)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月17日(日)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月18日(月)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月20日(水)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月21日(木)開場17:30/開演19:00
・8月22日(金)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月23日(土)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月24日(日)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月26日(火)〈1st.show〉開場12:00/開演13:30〈2nd.show〉開場17:30/開演19:00
・8月27日(水)開場12:00/開演13:30
特設ページ:http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/2025/conte-to-ongaku6/






















