『ぼくほし』顧問VS顧問弁護士のバトル勃発 “健治”磯村勇斗と生徒が詩心でつながる

8月4日に放送された『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)第4話は、学期末の出来事を扱った。
学校で起きた個人情報漏洩。漏洩したのは1年梅組の成績一覧で、副校長の三宅(坂井真紀)が誤って生徒の共有フォルダに成績評価ファイルを保存してしまったことが原因だった。他人に見られたくないセンシティブな情報で、教師の責任が問われる不祥事だ。天文部を立ち上げようとしていた1年の江見(月島琉衣)は、成績最下位がバレ ばれたうえ、評価欄に「トンチンカンな面あり」と書かれたことでショックを受ける。せっかく軌道に乗りかけていた天文部の復活にも暗雲が立ち込めた。
従来のリーガルドラマと毛色が違いすぎて、もはや法廷ものと異なるジャンルとして認知されていそうな本作。原因は多分に主人公でスクールロイヤーの健治(磯村勇斗)のキャラクターにあるが、第4話では弁護士本来の役割を思い出させる場面があった。
理事長の尾碕(稲垣吾郎)と顧問弁護士の長谷川(田村健太郎)は漏洩の責任を追及し、しかるべき処分を下すべきと主張する。法的な見地からは、教員の過失による不法行為にあたる。間に割って入った健治は、性急に事態の収拾を図るよりも、当事者の意向を尊重し、穏便にことを収めようとする。健治と長谷川の対応の違いが現れたのが、謝罪をするべきかと被害を受けた江見の心の傷に寄り添うことの是非だった。
責任を取らせることで問題を解決すると言えば、表向きは問題が解決したように思える。しかし裏を返せば、誰かに責任を取らせることで、問題をなかったことにしようとしていないだろうか。そんなことをしても江見の傷は癒えないし、三宅が辞めることを生徒たちは望んでいない。大人の体面が守られるだけだ。「生徒のために力を尽くしてきた先生が、たった一つのミスで追い詰められるのはおかしい」という台詞は、過度に懲罰的になった社会へのささやかな異議申立てでもあった。
長谷川との対比を通して鮮明になった健治の特質は、ある文学者の姿を通して浮き彫りになる。すでに何度か言及されている宮沢賢治を健治がどこまで意識しているかは定かではないが、珠々(堀田真由)は健治に、自らの“推し”である宮沢賢治を重ねて見ている。天体観測が趣味で宇宙や自然に語りかける健治は、自分自身の心の声にも耳を澄ましている。法の網の目からこぼれ落ちてしまう日常の事柄やささいな心の揺れであっても、健治はそこに人間と宇宙を見ている。人間の問題はそのまま宇宙の問題であり、すべてつながっている。だからないがしろにしていいものはない、というスタンスだろう。
健治のようなあり方を表現するのに便利な言葉があって、「詩心」という一点で健治と宮沢賢治は同質のものを志向している。その思いに共鳴する珠々や天文部の生徒たちが作ったのは自分たちの居場所だ。余談だが、健治や江見と同じく不登校の経験がある筆者にとって、生物部の部室はただ一つの居場所だった。学校は嫌いだったが、そこに行けば時間と自分自身をもてあました知り合い以上親友未満の仲間に会えた。毎話起こる事件と並行して天文部の歩みが描かれる『ぼくほし』で、勉強して成績評価を受ける以外の場所としての“学校”がクローズアップされるのはうれしい。学校はいろんな人の居場所になれると信じている。
何事にも臆病で不器用な主人公が、共学化で揺れる私立高校にスクールロイヤー(学校弁護士)として派遣されることになり、法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に、必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマ。
■放送情報
『僕達はまだその星の校則を知らない』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:磯村勇斗、堀田真由、平岩紙、市川実和子、日高由起刀、南琴奈、日向亘、中野有紗、月島琉衣、近藤華、越山敬達、菊地姫奈、のせりん、北里琉、栄莉弥、淵上泰史、許豊凡(INI)、坂井真紀、尾美としのり、木野花、光石研、稲垣吾郎
脚本:大森美香
音楽:Benjamin Bedoussac
主題歌:ヨルシカ「修羅」(Polydor Records)
監督:山口健人、高橋名月、稲留武
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
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