数字で読み解く『鬼滅の刃 無限城編』の凄さ 強固なファンダムを支える圧倒的ブランド力

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が凄まじい大ヒットを記録している。
史上最速となる公開8日間で、興行収入100億円を突破。公開10日間で100億を突破した前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の数字を塗り替えた。『無限列車編』は最終的に404.3億円の興行収入を記録し、『千と千尋の神隠し』の316.8億円を抜いて日本映画の歴代興行収入第1位となったが、最新作『無限城編』はさらにその記録を塗り替える可能性もありそうだ。

この作品については、すでに名だたる識者が様々な角度からレビュー記事を発表しており、そこまで漫画・アニメ・映画ともに深くコミットしているわけではない筆者が、訳知り顔で語る資格はない。そこんとこはわきまえてるつもりです、自分。あくまでこの稿では、『無限城編』を作品評として語るのではなく、『無限列車編』とデータ比較することで、本作のヒットの要因を客観的に分析していこうと思う。
まずは簡単に概要をまとめておこう。原作漫画は2016年から2020年にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)連載され、単行本の累計発行部数は、2025年7月時点で全世界で2億2000万部を突破(※)。2019年からは、テレビアニメ版も放送開始された。今回の劇場版は、2024年に放送された『柱稽古編』の続編であり、無限城での戦いを描く劇場三部作の第一章という位置付けとなる。

多少の改変がないわけではないが、テレビアニメ版・劇場版『鬼滅の刃』は極めて原作に忠実に作られている。“まだ誰も知らない、炭治郎や禰󠄀豆子の隠された物語”といったような、オリジナル要素はナシ。だからこそ熱心なファン(特に原作忠実ファン)は、アニメーション制作会社ufotableによる再現度の高い作画、花江夏樹(炭治郎)、鬼頭明里(禰豆子)、下野紘(善逸)、松岡禎丞(伊之助)といった人気声優の演技にどっぷり浸ることができる。
古い例で恐縮だが、かつてのテレビアニメ版を再編集した『機動戦士ガンダム』の劇場版三部作(『機動戦士ガンダム』、『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』)に近い感覚と言っていいかもしれない。
まずは、『無限城編』と『無限列車編』の興行収入を比較してみよう。上映館数に関しては、『無限城編』が全国452館に対し、『無限列車編』が全国403館と49の差があることは予め付記しておく。
公開初日
『無限城編』興行収入:16億4605万4200円、動員数:115万5637人
『無限列車編』興行収入:12億6872万4700円、動員数:91万507人
(興行収入:3億7732万9500円/約23%アップ、動員数:24万5130人/約21%アップ)公開3日間
『無限城編』興行収入:55億2429万8500円、動員数:384万3613人
『無限列車編』興行収入:46億2311万7450円、動員数:342万493人
(興行収入:9億1181万50円/約16%アップ、動員数:42万3120人/約11%アップ)公開10日間
『無限城編』興行収入:128億7217万6700円、動員数:910万4483人
『無限列車編』興行収入:107億5423万2550円、動員数:798万3442人
(興行収入:21億1794万4150円/約16%アップ、動員数:112万1041人/約12%アップ)
(※2)
動員数に比べて興行収入の上昇率が高いのは、当時よりもチケット代が高くなったからだろう(TOHOシネマズのチケット料金の場合、一般が1800円→2000円)。そして今年の場合は、7月20日(日)に参議院選挙があったため、『無限列車編』とのボラティリティ(変動)は大きいものと考えられる。
いずれにせよ、とんでもない数字だ。上映館数が約11%上昇したのに対して、動員数もほぼ同じ上昇率をマークしているということは、5年前とほぼ変わらないペース。多くの映画館が『無限城編』に上映館数を割いたため、他の映画が隅に追いやられてしまったことに否定的な論調もあったが、少なくとも興行面においてその判断は大正解だったといえる。




















