『放課後カルテ』はなぜ名作となったのか? 医療ものとしての丁寧さ・子役の活躍を総括

『放課後カルテ』はなぜ名作となったのか?

 あの偏屈学校医が帰ってくる。『放課後カルテ』(日本テレビ系)のスペシャルドラマの制作が発表された前日に、公式SNSで牧野(松下洸平)の白衣とメガネの写真が投稿されたのを見たときは、続編の予感だけで胸が高鳴った。

放課後カルテ【公式】日テレより

 『放課後カルテ』は、日生マユによる同名漫画を原作とし、2024年の秋クールに放送されたドラマ。学校医として小学校の保健室に勤務する牧野を主人公としながら、ドラマ版が丁寧に描いたのは小学生の多種多様な病気とそこに関わる大人の葛藤だった。ナルコレプシーや場面緘黙症などの知名度の低い病から、ストレスによる破壊衝動など理解されにくい精神的な病も丹念に描き出した作品で、学校を舞台にしながら医療的な側面も強く、知識を授けるような作品として当事者への寄り添いもみせた。

『放課後カルテ』はなぜ“子どもと大人の理想の関係性”を描けたか 舞台裏にあった濃密な時間

“無愛想な学校医”というキャラクターで、松下洸平が地上波ゴールデンタイム単独初主演を務める連続ドラマ……『放課後カルテ』(202…

 そして、何よりも言及したいのは子役たちの名演だ。ナルコレプシーを患う野咲ゆきを演じた増田梨沙や心臓病により小学校への登校が叶わない冴島直明を演じた土屋陽翔、破壊衝動に苦しめられる水本羽菜を演じた小西希帆など、各話でメインを担う子役たちの大人顔負けの繊細な芝居が素晴らしかった。『放課後カルテ』以降も活躍している子役も多い。そして、俳優たちの演技を引き立てる構成や演出も含め、『放課後カルテ』という原作の魅力を伝えるために手を尽くした作り手の熱意を感じる作品であった。

 小学生の病という目が向けられにくかった題材を扱いつつ、次世代の名優の発掘をしたという大きな価値のあるドラマであったことを考えれば、スペシャルドラマの制作決定は必然なのかもしれない。ドラマ放送時は、配信限定コンテンツとして6.5話と7.5話が制作されていること、原作が全17巻あることを踏まえると、実写化して届けたいエピソードを選びきれないという悩みもあったのだろう。

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