松本潤が体現する“患者に寄り添う”医師像 『19番目のカルテ』は“優しい”医療ドラマだ

7月13日より、TBS系日曜劇場にて『19番目のカルテ』の放送が開始される。主演を務めるのは松本潤、共演に新田真剣佑、小芝風花、清水尋也らが集結し、『コウノドリ』(TBS系)シリーズの坪田文が脚本を手がける。医療ドラマの新たな可能性を切り拓く意欲作だ。筆者は7月9日に行われた舞台挨拶にて一足先に第1話を鑑賞したので、本作の見どころをお伝えしたい。
物語の舞台は、18の専門分野に細分化された日本の医療界に新たに誕生した「総合診療科」。松本演じる主人公・徳重晃は、魚虎総合病院に赴任してきた総合診療医だ。総合診療医とは、臓器別の診療ではなく、患者を1人の人間として総合的に診る医師のこと。原因不明の症状に苦しむ患者や、どの科に行けばいいかわからない患者の「最初の窓口」となり、問診を通じて適切な専門医につなぐ――この一見地味に思える仕事が、実は現代医療の核心を突く重要な役割であることが第1話で明らかになる。
なんと言っても印象的だったのは、“問診”という行為が持つドラマ性だ。徳重の卓越した観察眼が、患者の何気ない仕草や言葉の端々から隠された真実を推理していく過程は、まさに「医療ミステリー」と呼んでもいい面白さを含んでいる。第1話では、どの診療科でも「気のせい」と片付けられてきた患者・黒岩百々(仲里依紗)の原因不明の痛みに、徳重が向き合う。彼が導き出すのは単なる診断名ではなく、患者が抱える生活の困難や心の痛みまで含めた「その人の物語」なのだ。

松本が体現する徳重という医師像が、とにかく新鮮だ。派手な手術シーンなどで腕前を見せつけるのではなく、低く穏やかな声で患者に語りかけ、じっと相手を見つめる眼差しで心を開かせていく。徳重が放つセリフが長年苦しんできた患者の涙を誘うシーンでは、筆者も思わず涙してしまった。さすが坪田文脚本、試写の会場でもすすり泣く声が多く聞こえてくるほど、“泣ける”ドラマとしての完成度が高い。

実は今回、松本にとってキャリア30年目で初の医師役挑戦となる。これまで数々の作品で“空気を支配する”存在感を見せてきた松本が、今度は“空気を相手に委ねる”表現に挑戦している。診察室で患者が言葉に詰まった時、すぐに助け舟を出すのではなく、じっと待つ。その沈黙の中には「あなたの話を聞きたい」というメッセージが込められている……。松本の「間」の使い方が本当に巧みで、俳優としての新たな進化を感じずにはいられない。





















