興収で読む北米映画トレンド
『スーパーマン』北米スマッシュヒット DCユニバースの「新たな10年計画」はじまる

新DCユニバース、鮮烈なる好発進。7月11日~13日の北米映画週末ランキングは、ジェームズ・ガン監督『スーパーマン』がオープニング興行収入1億2200万ドルを記録し、堂々のNo.1に輝いた(この数字は速報値であり、確定値では1億2400万ドルに上方修正される可能性もあるという)。
本作は、アメリカン・コミックスを代表するDC屈指の人気ヒーロー、スーパーマンを『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガンがリブートした第1作。2022年にDCスタジオの会長兼CEOに就任した、ガン&ピーター・サフラン(プロデューサー)が手がける新DCユニバースの本格的な開幕作でもある。

ワーナー・ブラザースは、旧DCユニバースの興行不振と「スーパーヒーロー映画疲れ」の傾向、さらに競合作品の多さから『スーパーマン』の週末興収を「1億ドル程度」と慎重に予測していた。ところが結果的には、『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)以来1年ぶりに初動成績1億ドルを突破したスーパーヒーロー映画となっている。
2025年公開作品としては、同じくワーナーの『マインクラフト/ザ・ムービー』、ディズニー実写版『リロ&スティッチ』に続いて第3位のスタート。スーパーマンの単独映画では『マン・オブ・スティール』(2023年)を抜いて史上最高、ジェームズ・ガン作品では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017年)に次いで第2位の好発進だ。なお、ワーナーにとっては今年6本目のオープニングNo.1作品である。
海外興収は78市場で9500万ドルと予想をやや下回り、全世界興行収入は2億1700万ドル。しかしながらスーパーマンは、マーベルのキャプテン・アメリカと同じく「アメリカを代表するスーパーヒーロー」というイメージがいまだ強いため、北米市場が全体をリードする傾向は必然的といえる。
海外市場ではイギリス(980万ドル)、メキシコ(880万ドル)、中国(660万ドル)が特に秀でた成績を示した。そんな中、日本も週末興収250万ドルを記録し、海外市場のトップ10にギリギリ滑り込んでいる。
この結果をもっとも喜んでいるのは、DCユニバース再建を優先事項としてきたワーナー・ブラザース・ディスカバリーだ。世界配給を統括するジェフ・ゴールドスタインは、「私たちは『スーパーマン』 でDCファンの信頼を取り戻すことを願ってきました。そして現実に、エキサイティングで新しい映画ユニバースの第1作として熱狂的に受け入れられたのです」とコメントした。

デヴィッド・ザスラフCEOは、ガン&サフランにDCユニバースを任せる決断をした当時を振り返りながら両者の献身ぶりを称え、今後にも大きな期待を寄せている。
「『スーパーマン』はほんの第一歩です。今後1年間だけでも、DCスタジオは映画 『Supergirl(原題)』と『Clayface(原題)』を映画館で、テレビシリーズ『Lanterns(原題)』 をHBO Maxで公開します。すべては大胆な10年計画の一部です。DCのビジョンは明確で、勢いは本物です。今後の展開に心から興奮しています」
『スーパーマン』はIMAX上映の需要も大きく、北米で1910万ドル(全体の15.6%)、世界で3040万ドルもの興行収入を記録。一部では賛否両論ながら、批評家・観客の評価は高い傾向にあり、Rotten Tomatoesでは批評家スコア83%・観客スコア93%、観客の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」を獲得した。
製作費は2億5000万ドル。前述の通り、サマーシーズン真っ只中で競合作品が多く、マーベル・シネマティック・ユニバース最新作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』も控えるなか、口コミ効果の後押しを受けて高水準の興行収入をキープできるかが今後のカギとなる。



















