松本潤が体現する“患者に寄り添う”医師像 『19番目のカルテ』は“優しい”医療ドラマだ 

松本潤が体現する“患者に寄り添う”医師像

 また、若手医師の“成長物語”も良い。小芝演じる整形外科医・滝野みずきは、「何でも治せる医者になりたい」という理想を抱きながら、専門分化した現実に戸惑う新米医師。徳重の問診に同席し、患者の生活背景を知ることの大切さに気づいていく過程を、素直かつ瑞々しい演技で魅せる。“師弟”のような関係でありながら、お互いに学び合うバディの関係性が心地よい。

 そして個性豊かな医師たちが織りなす群像劇としての厚みも魅力的だ。新田演じるスター外科医・東郷康二郎、清水演じる新米内科医・鹿山慶太、岡崎体育演じるマイペース麻酔科医・大須哲雄、ファーストサマーウイカ演じるカリスマ心臓血管外科医・茶屋坂心など、それぞれ専門性とプライドを持つ個性的な医師たちが、第1話から茶目っ気たっぷりに徳重とぶつかり合う。徳重の診療方針とどう向き合っていくのか、今後の展開が楽しみだ。

 コロナ禍を経て、私たちは医療の大切さを痛感した。だが同時に、効率化が進むあまり「患者の声」が置き去りにされがちな現実も見えてきた。「臓器ではなく人を診る」という総合診療の考え方は、医療現場だけでなく、私たちの日常でも必要なことかもしれない。相手の話をちゃんと聞く、その人の背景を想像する――そんな当たり前のことの大切さを、このドラマは思い出させてくれる。

 とはいえ『19番目のカルテ』は決して説教臭くない。むしろ、松本をはじめとする俳優陣の温かい演技と、時折挟まれるユーモアで、観る人の心にすっと入ってくる。診断名をつけることがゴールじゃない、患者に寄り添うことが医療の本質なのだ。そんなメッセージが、押し付けがましくなく伝わってくるのがいい。日曜の夜、疲れた心と体を癒やしてくれる、そんな優しいドラマをぜひ観てほしい。

『19番目のカルテ』の画像

日曜劇場「19番目のカルテ」

富士屋カツヒトによる連載漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』を原作に、坪田文が脚本を手掛けるヒューマン医療エンターテインメント。松本潤がキャリア30年目にして初となる医師役に挑む。

■放送情報
日曜劇場『19番目のカルテ』
TBS系にて、7月13日(日)スタート 毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:松本潤、小芝風花、新田真剣佑、清水尋也、岡崎体育、池谷のぶえ、本多力、松井遥南、ファーストサマーウイカ、津田寛治、池田成志、生瀬勝久、木村佳乃、田中泯
原作:富士屋カツヒト『19番目のカルテ 徳重晃の問診』(ゼノンコミックス/コアミックス)
脚本:坪田文
プロデューサー:岩崎愛奈
企画:益田千愛
協力プロデューサー:相羽めぐみ
演出:青山貴洋、棚澤孝義、泉正英
編成:吉藤芽衣、髙田脩
©︎TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/19karte_tbs/
公式X(旧Twitter):@19karte_tbs
公式Instagram:19karte_tbs
公式TikTok:@19karte_tbs

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる