白石麻衣、『最後の鑑定人』に繋がる演技の現在地 今こそ観直したい過去作5選

7月9日よりフジテレビ系水曜22時枠でスタートする『最後の鑑定人』は、白石麻衣にとって俳優キャリアの新たな転機となる作品だ。
心理学を専門とし、“嘘を見抜く変人研究員”という一筋縄ではいかないキャラクターは、これまで彼女が積み重ねてきた表現の引き出しの集大成と言える。思い返せば、乃木坂46卒業後の白石は、固定化されがちなイメージを自ら打ち破り続けてきた。制服に宿るプロフェッショナルの矜持、ツンデレヒロインとしての瑞々しさ、毒舌コメディエンヌの顔、ダークヒロインとしての妖しさ、そして物語を陰で支える儚さなど、白石は多彩な役を通して表現してきた。
本稿では、『最後の鑑定人』をより深く楽しむ手がかりとして、白石が演技の幅を広げてきた出演作5本を改めて振り返りたい。
『テッパチ!』
2022年に放送された『テッパチ!』(フジテレビ系)は、町田啓太演じる候補生の成長を描く自衛隊青春群像劇だが、白石麻衣が演じたエリート教官・桜間冬美は、物語全体の緊張感を保つ存在として機能していた。制服姿の立ち姿や教官としての所作には、実際の女性自衛官への取材で学んだ所作や細部のリアルが徹底して盛り込まれている。威圧感だけに頼らず、必要最低限の言葉で候補生を導く姿勢を、抑制された声の張りと視線の鋭さで示した芝居が印象的だ。
町田啓太×白石麻衣、『テッパチ!』で実感した魅力的な一面 「本当にかっこいいです」
陸上自衛隊を舞台に青年たちの成長と熱い思いを描くフジテレビ水10ドラマ『テッパチ!』が、7月6日より放送スタートとなる。主人公の…教官としての威厳の奥に時折見える孤独感や、規律に縛られた人間の弱さも、白石の芝居の中でしっかり息づいており、その抑制された演技は、物語の中に含まれたラブストーリーの要素にも説得力を与えていたと言える。制服を脱がずに揺れる感情を多弁にせず、呼吸と間で描ききったところに、この役の核があった。
『恋する警護24時』
『テッパチ!』で演じた冬美が決して崩さなかった芯の強さを、より柔らかくほぐしてみせたのが、2024年放送の『恋する警護24時』(テレビ朝日系)の岸村里夏だ。里夏は勝気で理屈では警護が必要だと理解しながらも、プライドが邪魔をして素直に人を頼れない弁護士という役どころ。白石は、当初は頑なに心を閉ざす里夏の冷たい視線と、守られる立場を受け入れざるを得ない瞬間のわずかな目の揺れを、呼吸するように切り替えてみせた。物語が求める“守られるヒロイン像”をただ演じることも、正面から恋に落ちるのでもなく、感情の抵抗が少しずつほどけていく過程を、言葉ではなく仕草や声の抑揚で形にした。その比重が増したのは、間違いなく『テッパチ!』で培った抑制の延長線上にある。表層的なツンデレにとどまらない人間味を、会話の間に宿したことが、この役の説得力を支えていた。
白石麻衣、コメディエンヌとしての才能開花 『恋する警護24時』で試される演技力の真価
白石麻衣という俳優に対してどのようなイメージを浮かべるだろうか。俳優として表舞台に立つ彼女の姿を観て多くの方が感じるのは、やはり…『俺のスカート、どこ行った?』
2019年の『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)で、白石が演じたのは、世界史教師の里見萌だった。古田新太演じる型破りな教師に向けて放った衝撃的なセリフも話題となったが、注目すべきはその裏での演技の温度だ。もし毒舌だけで場をかき乱すキャラクターだったなら、あの一言は一過性の話題に終わっていただろう。白石は里見萌を“疲れた現場の空気”と重ね合わせるように演じ、笑いを取る場面以外では視線を外したり、声のトーンを落としてわずかな反発心をにじませた。
型破りな主人公に毒を吐きながらも、少しずつ影響を受けて変わっていく小さな変化が、その衝撃のセリフを単なるインパクトで終わらせなかったと言える。挑発的な言葉を“笑い”に変えるだけでなく、人物として成立させた意味で、この役は白石にとって初めて“イメージを自ら崩す”確かな一歩になった。























