全てが予想外! 痛快暴力で突き抜けるインドアクション『レオ:ブラッディ・スウィート』
本作のアクションは、実にバラエティに富んでいる。冒頭いきなり描かれるハイエナ大暴れでは、人体損壊も辞さないストロングスタイルで掴みはOK。その後のカフェでの大乱闘ではリアル寄りの乱闘を見せつつ(歯を狙った小技のアイデアがすごくいい。こういう細かいテクニックをサラっと見せてくれるとテンションが上がる)、いざ拳銃を握ったあとはキレキレのスピード感で主人公の異常性を引き立てる。あちこちで大乱闘をし続け、見るからにワンカット撮影をしてくれと言わんばかりの、ヤケに見通しのいい悪の秘密基地が出てきたと思ったら、もちろん思った通りのアクションが炸裂。CG全開でハッタリ優先のカーチェイスも上手く見せつつ、最後はブルース・リーちっくな黒いズボンに上半身裸のファッションに着替えた主人公が、刃物を持ったラスボスとタイマン! 原点にして頂点『燃えよドラゴン』(1973年)へのオマージュだと思われるが、まさかブルースまで詰め込むとは思わなかった。恐るべきアクション映画への情熱である。
しかし、本作の最大の見どころは、やはりオチにあるだろう。正直に言うと……ある意味、今年で一番ビックリした。こんな着地点があるのかという驚きだ。最初こそ「人食いハイエナをペットにするところ以外は、しっかり『ヒストリー・オブ・バイオレンス』だなぁ」と、ゆた~っと呑気をこいていた私だが、どんどん話がデカくなり、100人くらいの悪漢たちが「レオを殺すぞー!」と決起集会を開き出すと、「これどこに行くんだ?」と目が離せなくなった。そして大災害のような暴力が吹き荒れた末……主人公、パールティバンが家族と迎える結末には驚愕のひと言である。ナイアガラの滝を樽に入って自由落下するくらいの、感情のフリーフォールを体感できるはずだ。
ちなみに、ローケーシュ・カナガラージ監督は自分の映画のキャラでユニバースを作る「ローケーシュ・シネマティック・ユニヴァース(LCU)」なる概念を提唱している。本作は『囚人ディリ』(2019年)、『ヴィクラム』(2022年)に続く3本目だそうだ(ちなみに順不同で一本ずつ観ても全く問題はありません)。このユニバースにおける“アベンジャーズ”が完成した暁には、インドの地形が変わるほどの大騒ぎが発生するかもしれない。LCUの行方を期待しておこうと思う。本作『レオ:ブラッディ・スウィート』は、そんな今後が気になって仕方がなくなる1本だ。
参照
※https://spaceboxjapan.jp/leo/
■公開情報
『レオ:ブラッディ・スウィート』
6月20日(金)より、新宿ピカデリーほかにて公開
出演:ヴィジャイ、トリシャー・クリシュナン、サンジャイ・ダット、アルジュン・サルジャー
監督:ローケーシュ・カナガラージ
脚本:ローケーシュ・カナガラージ、ラトナ・クマール、ディーラジ・ヴァイディ
撮影:マノージ・パラマハムサー
音楽:アニルド
編集:フィローミン・ラージ
製作会社:セブンスクリーン・スタジオ
配給:SPACEBOX
2023年/タミル語/161分/原題:Leo/R15+
©Seven Screen Studio
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/leo/