『M:I』はトム・クルーズと戸田奈津子の“絆”の物語だ 独特翻訳“なっち語”でも信頼の理由

『M:I』はトムと戸田奈津子の“絆”の物語

 トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が日米で華々しいスタートを切った。5月23日からの公開4日間で、アメリカ国内の興行収入は約114億円を記録。2018年の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の約88億円を大きく上回り、シリーズ過去最高の滑り出しとなった(※1)。

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 クルーズはこの快挙を受け、現地時間5月27日に自身のSNSで「今週末は、まさに歴史に残る出来事でした!」とつづり、「フィルムメーカー、アーティスト、クルーのみなさん、そしてスタジオで働くすべての方々へ、おめでとう。そしてありがとう」と感謝のメッセージを発信している(※2)。

 その勢いは日本でも同様だ。公開3日間で動員53万人超、興行収入は約8億4900万円に達し、先行上映を含む累計では前作比152%を超える成果を上げている。(※3)

 同作のプロモーションのため、3年ぶり、通算25回目の来日を果たしたクルーズは5月7日、記者会見の席上で「少しだけお時間をいただけるなら、とても特別な方に感謝の気持ちを伝えたいと思います。それは、日本の映画にとっても特別な存在である戸田奈津子さんです。戸田さん、いらっしゃいますか?」と客席に向かって呼びかけ、「私たちは偶然にも同じ誕生日なんです。7月3日。すべてに感謝します。戸田さん、ありがとうございます」と、“日本の母”と慕う字幕翻訳者・戸田奈津子へのサプライズメッセージを送っている。

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 「レジェンド」と呼ばれる戸田だが、字幕翻訳家としてのキャリアは遅咲きだった。本格的なデビュー作は、40歳だった1980年に日本公開されたフランシス・フォード・コッポラ監督作『地獄の黙示録』。女性がほとんどいなかった字幕翻訳の世界に飛び込んで20年もの間、チャンスを伺いながら、通訳兼ガイドの仕事に従事し、偶然にもコッポラ監督と仕事を共にする機会を得て、彼の“鶴の一声”により夢を叶えるに至ったという。(※4)

 以降は、『E.T.』をはじめ『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『トップガン』シリーズなど、時代を象徴するハリウッド大作の字幕を次々と担当。彼女が字幕をつけた作品は2000本以上とも言われ、「字幕文化そのものを創った」功績が認められ、2025年には旭日小綬章が授与されている。

 とりわけクルーズとの絆は別格だ。1992年の映画『遥かなる大地へ』のプロモーションで初来日した際の通訳から始まり、以降、クルーズが「TODA Sanじゃなきゃ嫌だ」と語ったという逸話もある。

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