『あんぱん』中島歩が運んできた結太郎の“面影” 明暗のコントラストに言葉が出ない

『あんぱん』中島歩が運んできた結太郎の面影

 5月20日放送の『あんぱん』(NHK総合)第37話では、のぶ(今田美桜)が人生初のお見合いに臨んだ。

 御免与尋常小学校に奉職したのぶに近郊から縁談話がいくつも舞い込む。国策として「結婚十訓」が発され、「産めよ育てよ」と子どもを持つことが奨励された時代に、若くて模範的なのぶは理想的な花嫁候補だったに違いない。

 結太郎(加瀬亮)と親交があった高知の若松家からも、のぶに縁談が持ち込まれる。息子の次郎(中島歩)は船の機関士をしており、生前の結太郎と面識があった。結太郎がつないだ縁に、のぶと羽多子(江口のりこ)は顔をほころばせた。とはいえ、教師として日本のために尽くしたいのぶに結婚する気はない。お見合いに出席したのも、結太郎の話を聞くためだった。謝るのぶに、次郎も結婚の必要性を感じていないと本音を打ち明けた。

 マイペースで自分の考えを持っているのぶと次郎は、ある意味似た者同士で、一緒になったらうまく行きそうな雰囲気を感じた。くわえて長身、ハンサムである。非の打ちどころのない結婚相手が登場したところで、立ち止まって考えると、本作でのぶは嵩(北村匠海)と夫婦になることが第1話の時点で予告されている。別の道を歩むことになる次郎だが、役柄からして単なる当て馬とも思えない。

 次郎はのぶにとって父・結太郎を感じさせる存在だ。父不在の期間が長いため、影が薄くなっていたが、結婚という人生の岐路に立ち、相手がどんな男性かを吟味するときに、不可避的に参照されるのが父親だろう(異論は認める)。国という父権的な正義の庇護下にあるのぶが父親と似た相手を選ぶかは人生を左右する決断であり、「正義は逆転する」という今作のテーマとの関係で意味を持ってくるはずだ。

 結太郎につながる話を聞いたのぶは、欠けていた空白を埋めるような充足を感じただろう。見合いの席の客間は日光が差して明るく、まるで天国の結太郎が見守っているかのようだった。次郎も良い感触を抱いたようで、二人の縁談には続きがありそうだ。

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