『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』炭治郎の“自分語り”は何を問いかけていたのか?
“無限のリバイバル”は何を問いかけるのか?
魘夢に夢の世界に閉じ込められた炭治郎は、強力な理性でもって「夢の中にいる自分」をメタ認知し、脱出を図る。日頃から自身の行動を自己言及的に認識していた炭治郎こそが、誰よりも先に魘夢の血気術の正体に気付けたのには説得力があるだろう。
したがって炭治郎と魘夢の戦いは、ある意味で『無限列車編』を象徴する場面だ(猗窩座と煉獄さんのベストバウトに埋もれがちだが、「無限列車」にいた本来の敵は魘夢である)。あるいは言ってしまえば、随所にみられる自己言及性こそを『鬼滅の刃』の特徴とするならば、魘夢との戦い自体がこの作品の比喩にもなりうる。メタ認知を「無限」に繰り返して鬼に立ち向かう炭治郎の姿は、『鬼滅の刃』そのものだ。
炭治郎が放つメタ認知の「無限遡行」性は、この作品の至るところに遍在している。このイメージを「無限列車」「無限城」などのネーミングと重ねて連想してしまうのは私だけかもしれないが、いずれにしろこの頻繁な自己言及はなんらかの意味で『鬼滅の刃』の重要なポテンシャルだろう。
「隙あらば自分語り」「無限に〜〜できる」「無限〇〇編」などといったネタワードがミーム化しているように、『鬼滅の刃』からなんらかの「現代性」を見出すとすれば、炭治郎のあの自分語りだったのかもしれない。
「無限列車」「無限城」「自己言及の無限遡行」。「リバイバル」による無限周回視聴を経て思うのはそんなことだ。
■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
リバイバル上映中
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二、矢中 勝、樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
製作:アニプレックス、集英社、ufotable
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/katanakajinosatohen/
公式Twitter:https://twitter.com/kimetsu_off