『しあわせは食べて寝て待て』宮沢氷魚の役幅の広さを再確認 男性同士の恋愛から大河まで

宮沢氷魚の役幅の広さを再確認

 楽しみにしているドラマがあると、放送が終わった瞬間から「あぁ早く来週にならないかな」と思う。次回が待ちきれないので、そういうときはひとまず予告を見るのだが、見れば見るほど「あぁ早く来週にならないかな」と思う。そんな無限ループだ。最近まさにこのように毎週楽しみしている作品がある。『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)だ。

 本作は、水凪トリの同名漫画を原作としたヒューマンドラマ。「一生付き合って行かなければならない」病気を患っている主人公・麦巻さとこを桜井ユキが演じている。デザイン事務所で週4日パートをしながら、築45年家賃5万円の団地で1人暮らしのさとこ(桜井ユキ)は、お隣さんであり大家・美山鈴(加賀まりこ)との出会い、「薬膳」の世界を知る。生きるのが苦しくなってしまうような現実に「薬膳」を取り入れながら、無理せず向き合うさとこの姿に、「自分ではどうにもならないことってあるよね」と背中をさすってもらっているような、温かい気持ちになる。

 物語はさとこを中心に話が進んでいくが、物語のキーパーソンであり、回を重ねるごとに存在感の増しているのが鈴の同居人の羽白司。彼は鈴の息子でも孫でもない。鈴とは他人(おまけに無職)。なのに、2人は同居しているという謎多き人物だ。恋愛的な意味ではなく、さとこにとって気になる存在でもある司。演じているのは、モデルとしても活躍している宮沢氷魚だ。

宮沢氷魚が感謝する“出会い”のタイミング 「今は“一番いいものを作りたい”」

NHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』に出演した宮沢氷魚は、時間に追われる日々のなかで、自身と役柄が重なり、「ゆっくりと時…

 宮沢は、綾野剛主演『コウノドリ』第2シリーズ(2017年/TBS系)で研修医・赤西吾郎役を演じて以降、さまざまな作品に出演してきた。なかでも筆者がとくに印象に残っているのが、男性同士の愛を描いた2つの作品だ。ひとつは今泉力哉監督の『his』(2020年)。主人公・井川迅(宮沢氷魚)が8年ぶりに突然娘(外村紗玖良)を連れて現れた昔の恋人・日比野渚(藤原季節)をどう受け入れるのかというストーリーを主軸に、どこまでいっても埋まらないLGBTQに対する世論、親権問題、そしてシングルマザーが直面する過酷な現状などが描かれている。中性的な宮沢のルックスも含め、せつなげな表情や仕草で難しい役どころを丁寧に演じ、第12回TAMA映画賞で最優秀新進男優賞受賞したほか、第45回報知映画賞や第42回ヨコハマ映画祭、第30回日本映画批評家大賞など数々の新人賞を受賞。

 もうひとつは、松永大司監督『エゴイスト』(2023年)だ。パーソナルトレーナーとして働きながら、シングルマザーである母を支えながら暮らす主人公・浩輔(鈴木亮平)の恋人・龍太を演じた。体型も含めてその役になりきる鈴木の表現力はもちろんだが、透明感あふれる宮沢の佇まいが純粋な青年という龍太のキャラクターに説得力を与え、第16回アジア・フィルム・アワード助演男優賞受賞するなど、俳優として高い評価を得た。

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