『ジュラシック・ワールド』鑑賞前に押さえておきたい前提 過去シリーズを振り返る

『ジュラシック・ワールド』初心者向けガイド

恐竜はすべてメス? 再生技術の仕組みは?

 これは『ジュラシック・パーク』で触れられている前提なのだが、実は本シリーズに登場する恐竜のほとんどは基本的に“メス”なのである。そのため、原語版では恐竜に対する代名詞が「she」として発言されている。ではなぜ“メス”なのか。

 『ジュラシック・パーク』では恐竜の血液を吸った後、琥珀の中に閉じ込められた蚊からDNAを採取し、遺伝学者がスーパーコンピューターでDNAの塩基配列を解析、欠落部分はカエルのDNAで埋めることで配列を完成させ、未受精のダチョウの卵にそのDNAを注入して恐竜を生み出していると説明されている。そして科学者は頭数の管理のため、染色体を操作。脊椎動物の胚は遺伝的には全てメスで、ホルモンなどの刺激がない限りオスにならないので、意図的にメスの恐竜だけを生み出し、繁殖の可能性を消していた。

 しかし、それでもどうして繁殖することができたのか。それは欠落している恐竜の遺伝子にカエルの遺伝子が混ざっていることが原因だった。カエルの中には、例えば西アフリカのカエルのようにメスだけの環境の中ではその一部がオスに変わることがあると本編では説明されている。実際、性別が遺伝的性質と結びつきの強い哺乳類に対し、爬虫類や魚類は環境によって性別が左右される。両生類はその中間に位置していると言われ、遺伝で決まることも環境の影響を受けて変わることもあるのだとか。実際、特定の汚染物質によってオスのカエルがメス化する現象も確認されているのだ(※)。

 それでも、パークの恐竜は施設が崩壊すれば再び絶滅するはずだった。科学者たちは遺伝子操作の際にあらかじめ体内でリジン(必須アミノ酸のひとつ)を作れないようにしたのだ。つまり、パーク内で独自に与えられるアミノ酸を摂取することで恐竜は生き続けることができるが、科学者がアミノ酸を与えない限り、恐竜は徐々にリジン欠乏による昏睡状態に陥り、最終的に死亡する。これは恐竜が脱走した時のための安全装置として科学者が遺伝子に取り込んだシステムであり、それに伴ってパーク崩壊後は恐竜も自然淘汰されるはずだった。

 しかし、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』ではパーク事故から4年後、飼育島で恐竜が繁殖している上に自然の中で生き延び続けていることが判明。この原因を調査するために、第2作目ではマルコムの彼女であり古生物学社のサラ・ハーディングが島に向かう。そしてリジンの豊富な豆類が島に生い茂っていて、それを食べた植物恐竜の体内でアミノ酸が形成され、さらにその植物恐竜を捕食する肉食恐竜もアミノ酸の摂取に成功したことが明かされた。

 さて、そんないろいろがあっての『ジュラシック・ワールド』だが、やはり施設側が意図的に生み出す恐竜は基本的にメスである。つまり本作に登場するかっこいい恐竜たちはみんなメス、ということで彼女たちの活躍に注目してほしい。

注目したい恐竜は?

 どの恐竜にも注目していただきたいものの、特に目を向けるべきはやはりT-REX(ティラノサウルス・レックス)とヴェロキラプトル4姉妹、モササウルス、そして本作の“ヴィラン”でもあるインドミナス・レックスだろう。

 『ジュラシック・ワールド』に登場するT-REXは実は『ジュラシック・パーク』に登場したものと同じ個体で、その証に1作目のクライマックスでヴェロキラプトルにつけられた傷が跡になって残っているのだ。まさに、シリーズの女王の立ち位置にいる存在である。彼女の古傷の由来が気になる方は、ぜひ過去作を観てほしい。

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 そしてヴェロキラプトル4姉妹。彼女たちは遺伝子操作と戦闘訓練によってかなり能力が高いラプトルとして、軍人のオーウェン・グレイディ(クリス・プラット)に調教されている。とはいえ、ラプトルは元々知能が高く、隙を見て飼育員を捕食してしまおうといつも目をギラつかせているのが良い。姉妹の中でも特に長女の「ブルー」と呼ばれる個体は、オーウェンの相棒的な存在として大活躍する。なんといっても『ジュラシック・パーク』3部作ではティラノサウルス以上に人間を恐怖に陥れる“ヴィラン”的な存在として描かれてきただけに、『ジュラシック・ワールド』でそんな彼女たちが人間の味方として奮闘する姿が泣けて、泣けて仕方ない。その“エモさ”をより感じたい方は、ぜひパーク・シリーズを観てラプトルに沼落ちしてほしい。

 また、圧倒的に本作で人気なのがモササウルスだ。実はモササウルスは恐竜ではなく、肉食海棲爬虫類である。これまでのシリーズで登場した恐竜以外の古代爬虫類は翼竜であるプテラノドンだけで、モササウルスはシリーズ初の海棲爬虫類として大きな存在感を発揮する。

 最後に、本作の目玉でもあるインドミナス・レックスを紹介しておこう。彼女は本シリーズに初めて登場する“架空の”恐竜で、ティラノサウルスのDNAをベースにヴェロキラプトルやカルノタウルス、ギガノトサウルス、テリジノサウルスなど様々な恐竜や生物のDNAを加えて遺伝子組み換えにより誕生した大型肉食キメラ恐竜なのだ。混じり混じった遺伝子の中にはコウイカのDNAも含まれており、それによってカモフラージュ能力があったり、アマガエルのDNAによって赤外線放射抑制能力を持っていたりと、とんでもないチートキャラだ。しかも劇中で暴れるこの個体は、姉妹として孵化したのに共食いで妹を食べた姉であることがわかっており、そういったところからも残虐性や凶暴性が伺える。この極悪恐竜に対し、かつて『ジュラシック・パーク』で死闘を繰り広げたティラノサウルスとラプトルという因縁のタッグが共闘するクライマックスシーンは圧巻そのもの!

 登場する恐竜や施設の歴史など、過去シリーズとなる『ジュラシック・パーク』トリロジーを深ぼれば深ぼるほど深みや面白みが増す『ジュラシック・ワールド』。ぜひ、本作から世界で最も人気で有名な恐竜映画シリーズの魅力に触れる冒険に、足を踏み入れてほしい。

参照
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/032500178/

■放送情報
『ジュラシック・ワールド』
フジテレビ系にて、5月3日(土)21:00〜23:15放送
監督:コリン・トレボロウ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、トーマス・タル
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
脚本:リック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー、デレク・コノリー&コリン・トレボロウ
キャラクター原案:マイケル・クライトン
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ヴィンセント・ドノフリオ、ジョン・ハード、ニック・ロビンソン、オマール・シー、B・D・ウォン、イルファン・カーン
©2015 Universal Studios and Amblin Entertainment, LLC.  All Rights Reserved.

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