『対岸の家事』江口のりこの悲痛な声に胸が痛む 意外な人たちの“海の上の雨”が滴る
また「肩代わり」という面倒をすべて他人に引き受けさせるようなニュアンスのある言葉、相手にも罪悪感を覚えさせる言い方にも詩穂は違和感を持っており、「肩を貸す」という言い回しを提案。礼子に対して「全部は無理でも少しなら私の肩貸せます」とも言い添える。
「私が休む分、誰かが肩代わりしなきゃいけない」「休むしかない。でもその答えによって損害を被るのは私じゃない。苦しむのは私じゃない。それが苦しい。休むくらいなら最初からいないほうがいいのかな」「罰が当たったのかな。自分で背負えもしないのに欲張ったから」という悲痛な礼子の声には胸が痛んだ。
そして礼子がこんなふうに思っていることなど職場の人間は知る由もないが、そんな彼女にも見えていないことがあった。礼子に時に手厳しかった今井が有休を取ろうとしていたのは、癌で手術をする愛犬のサポートのためだった。自分の中の“海の上の雨”を見過ごしてしまうことは、周囲の人のそれもまた見落としてしまいかねないのだろう。
職場でもSOSを出し合える関係性を築けた礼子は、よりしなやかに優しく強くなった。そもそもこの絵本を幼少期に読み聞かせてくれた母親の言葉や姿を思い出し、人知れず涙する詩穂のことが気になる。彼女の母親は“見過ごされてしまった海の上の雨”が溢れてしまったのだろうか。
朱野帰子による小説『対岸の家事』を原作としたヒューマンドラマ。専業主婦の主人公・詩穂が、生き方も考え方も正反対な「対岸にいる人たち」とぶつかり合いながら、自分の人生を見つめ直していく模様を描く。
■放送情報
火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、永井花奈、寿昌磨、吉玉帆花、五十嵐美桜、中井友望、萩原護、西野凪沙
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
プロデューサー:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
編成:吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
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