『光る君へ』“物語”の意義を突きつけた最終回に 吉高由里子の繊細な演技が残した余韻

『光る君へ』最終回が突きつけた物語の意義

 悲しくとも苦しくとも人生は続く、それは印象的な幕引きにも通じる。道長の死後、再び旅に出たまひろは双寿丸と再会する。かつて双寿丸は「敵を殺すことで、民を守るのが武者なのだ」と語っていた。しかし幾度となく大切な人の命が奪われる経験をしたまひろにとっては、民のための政を行うことこそが、民を守ることにつながると考えていたはずだ。

 まひろは戦に向かう武士たちの背中を見つめながら、心の中で道長に呼びかけると、「嵐が来るわ……」と呟いた。病床で「この世は何も変わっていない。俺は一体何をやってきたのであろうか……」と嘆いた道長に、まひろは「戦のない泰平の世を守られました」と伝えていた。だからこそ、まひろは娘の命を守ってくれた若き青年を母親のような面持ちで見送りながらも、戦乱の世が来る予兆を感じ取り、厳しい面持ちを見せたのだと考える。しかし、前を見据えて歩み始める姿で幕引きとなったことが、“物語の先”に待つのが不穏さだけではないことを表しているようにも感じられた。

 劇中、まひろは『源氏の物語』に興味を持った見知らぬ娘・ちぐさ/菅原孝標の娘(吉柳咲良)から、自身が書いた物語について思わぬ意見を聞いていたが、物語は受け取り手によっていかようにも解釈できるのが面白い。最後に映し出されたまひろの表情が物語るものもまた同じはずだ。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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