サンジゲン 松浦裕暁が語る、CGアニメの現在地 『MyGO!!!!!』の“ハイブリッド”な魅力

サンジゲン松浦裕暁が語るCGアニメの現在地

 アニメスタジオに潜入し、スタッフへのインタビューを通してそのスタジオが持つ“独自性”に迫る連載「アニメスタジオのここが知りたい!」。第4回となる今回は、スタジオ代表である松浦裕暁の目線から「サンジゲン」の魅力を掘り下げていく。(編集部)

 手描きのアニメ大国である日本において、3DCGといかに向き合うかは制作上の重要な論点であり続けた。日本のCGアニメの先駆者サンジゲンは、CGでいかに日本アニメらしさを表現するのかを追求し続けてきた会社だ。そのサンジゲンの劇場版『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』が前後編2部作で公開、現在は前編「春の陽だまり、迷い猫」が公開中だ。

 2023年に放送された同作のテレビアニメは、人物描写の深まりとともに表現の進化も話題となった。2024年は、日本のCGアニメに多彩な表現が生まれつつあることが確認できる年となっている。サンジゲン代表の松浦裕暁氏は、現状の日本CGアニメについて、そしてガールズバンドアニメの流行についてどう思っているのか、そして同社の今後について率直に語ってもらった。

作画とCGのハイブリッドを突き詰めた『MyGO!!!!!』

――サンジゲンが『バンドリ!』のTVアニメの制作を開始してから5年が経ちますが、表現はどのように進化してきたでしょうか?

松浦裕暁(以下、松浦):最初のアニメ『BanG Dream! 2nd Season』の時は、CGでどこまで表現できるのか、やれるところまでやってみようという感じでした。2nd SeasonとTVアニメ「BanG Dream! 3nd Season」(以下、『3rd Season』)の間を置かずにそのまま地続きで作っていたので量産しないといけないし、スケジュールとクオリティのバランスをとるのがすごく大変でしたね。それに、手描きの作画とCGをどう合わせていくのか、まだ社内のデジタル作画のメンバーも少なかったので難しいところでした。その後、2本の劇場版『Bang Dream! Film Live』(以下、『FILM LIVE』)と劇場版『BanG Dream! Episode of Roselia』を経て、『BanG Dream! ぽっぴん'どりーむ!』(以下、『ぽっぴん'どりーむ!』)から方針を変えることにしたんです。やっぱりCGで完成させたカットの上から作画で描き足していった方がいいんじゃないかと。『ぽっぴん'どりーむ!』の時は10~20カットくらいだったと思いますが、これに手ごたえを感じたんです。『MyGO!!!!!』では、さらに10倍くらいその手法を取り入れています。

――『MyGO!!!!!』は確かにキャラクターのクローズアップ時の情報量がこれまでとは違いました。CGで完成させたショットの上からレタッチしているわけですね。

松浦:ほとんどのパーツはCGですけど、髪の毛や目、影を修正したり、目元に少し影を足したりとか、それだけで全然印象が変わるんです。毎回かなりの数の画を描き入れていますが、そんなに分からないと思います。全身ではなく一部だけのものもありますが、クローズアップは特に重視しています。

――サンジゲンは、いわゆるセルルックCGの草分け的存在ですが、手描きの要素を増やしたというのは、CGの表現力はどこまで突き詰めても、手描きとは差があるということなんでしょうか?

松浦:そうは思いません。CGは何でもできるんです。できるんですが、コストの問題はあります。どうしてもアップだと足りない部分がある。CGで作り込んでもいいけどコスト的に見合わないので、描いてしまった方がいい。社内に作画スタッフもいるので、一つのやり方に固執する必要はなく、柔軟に考えた結果として今のやり方があるということです。

昔からサンジゲンはCGと手書きのハイブリッドで、今もそんなに大きく変化したつもりはないです。デジタルなのでレファレンスはどんどん溜まっていくので、このスタイルもこれからどんどん生産性が上がってさらに良くなっていくと思っています。

――『MyGO!!!!!』は、クローズアップも面白いですが、第7話「今日のライブが終わっても」での、引きの映像による定点観測的なカットもユニークでした。

松浦:あれ、すごく大変なんですよ。僕が知らないところでやっていたので、知っていたら絶対止めますね(笑)。ただ、出来上がった映像は緊張感が溢れていてすごかった。引きの画で全員が動いていますからね。アニメではあまりやらないカットですけど、たまにああいうのが入るとリアリティが一気に出ますね。

――1エピソード全部が、POVの見た目ショットという話数もありましたね(第3話)。『Film Live』の1作目にも、やはりPOVの長回しもありましたし。

松浦:あの長回しは僕が入れたいと言いました。あれはあるアーティストのライブ映像がヒントでして、演奏が終わって一度控室に戻るところをずっとカメラで追いかけていき、アンコールで戻っていく。アンコールコールが止まない中、「よし、わかった」ともう一回ステージに向かうんですけど、それがすごくカッコよかったんです。

――あのカット、確か7、8分くらいありましたよね。

松浦:長かったですね。キャラがはけたらデータから消していかないと、データが重たすぎて作るのが大変でした。

――今回の劇場版、後編には『FILM LIVE』とタイトルにありますね。

松浦:前後編で劇場版を作ることは昨年の秋には決まっていました。前編は、TVシリーズで謎が多かった楽奈を描こうと決まりました。前編はそれでTVアニメテレビと違いが出せるけど、後編はどうするかとなって、ポエトリーリーディングのシーンを伸ばすなどいろいろやっていますが、やっぱりみんなライブが観たいですよね。物語と地続きでライブがあるような構成にしています。

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