『塔の上のラプンツェル』は“初めて”づくしのプリンセスだった 屈指の人気を誇る理由
スタッフの意見をふんだんに取り入れたキャラクター
本作に登場するキャラクターたちも、これまでのプリンセス作品に登場するものとは一味違っている。ラプンツェルの相手役となるフリン・ライダーは、「ディズニー史上最高のイケメン」にするために、スタジオの女性たちを集めて「ホット・マン会議」が行われたことでも有名だ。好きな男性の写真を持ち寄った彼女たちは、議論を重ねてイケメン男性の顔のパーツを交換したり、男性スタッフの案にことごとくダメ出ししたりと、かなり白熱した会議だったようだ。監督のネイサン・グレノとバイロン・ハワードは、後にこれを「キツい会議だった」と語っている。
また本作のヴィランであるマザー・ゴーテルも、これまでのプリンセスもののヴィランとは違った特徴を持っている。 グレノは「彼女は魔女ではないからこそ、恐ろしいキャラクターにしたかった」と語っている。ゴーテルとラプンツェルは母と娘の関係を築いており、当初ラプンツェルはゴーテルを信頼していた。しかし彼女は「外の世界は危険」「あなたを守るため」と言いながら、ラプンツェルに自分は無能だと思い込ませる言葉の数々をぶつけている。彼女は「私を悪者にしたいのね」と、怒りを遠回しに表現するパッシブ・アグレッシブ(受動的攻撃行動)で、ラプンツェルを操っているのだ。監督たちは子どもの自立を阻む毒親のイメージを膨らませるため、数人の女性スタッフから母親との関係について話を聞いたという。ゴーテルの歌う「お母様はあなたの味方」の歌詞「少し太ってきたわね」は、それらのインタビューの中で話された内容をそのまま使ったものだそうだ。こうした背景から、ゴーテルはこれまでのプリンセス作品に登場してきた邪悪な義母像とはまた違った、現実味のある恐ろしさを感じさせるキャラクターとなった。
明るく積極的なプリンセス像が人気に
先述の通り、ラプンツェルは魔法の力を持ったプリンセスだ。そして彼女は「自分の夢を叶えるため」に冒険の旅に出る。これまでのディズニープリンセスのなかにも、冒険をくり広げたキャラクターはいたが、そのどれもが消極的な理由からだった。ムーランは家族を救うため、やむを得ず男として戦士となり、カエルになってしまったティアナは人間の姿に戻るため、その方法を探す旅に出た。ラプンツェルが冒険に出た理由はもっと積極的で、持ち前の明るく純粋な性格で道を切り拓いていく。さらに、実はラプンツェル以降のプリンセスも、彼女ほど希望に満ちた理由で冒険に出たわけではない。『アナ雪』のアナや『モアナ』の主人公は自らすすんで旅に出るが、それは「自分の国を守る」という使命感からの選択だった。やはり好奇心旺盛なラプンツェルの明るさはディズニープリンセスのなかでも際立っていて、それが彼女の人気の理由ではないだろうか。
初の3DCGプリンセスであり、魔法の力を持ったラプンツェルは、その明るさや純粋さで多くの観客の心をつかんだ。また、フリンやゴーテルなどのキャラクターたちや、ダークな面もあるストーリーによって『塔の上のラプンツェル』は魅力的な作品になった。新たなプリンセスによるドタバタの大冒険。ラプンツェル、フリン、ゴーテルなどの興味深いキャラクターとともに、ほかのプリンセス作品とは一線を画すその素晴らしさを、ぜひ楽しんでほしい。
参考
・https://www.denofgeek.com/movies/byron-howard-nathan-greno-interview-tangled-disney-animation-and-directing-disney-royalty/
・https://dvdizzy.com/tangled-directors-interview.html
■放送情報
『塔の上のラプンツェル』
日本テレビ系にて、10月11日(金)21:00〜22:54放送
監督:バイロン・ハワード、ネイサン・グレノ
製作:ロイ・コンリー
製作総指揮:ジョン・ラセター、グレン・キーン
脚本:ダン・フォーゲルマン
音楽:アラン・メンケン
キャスト:中川翔子/歌・小此木麻里(マンディ・ムーア)、畠中洋(ザッカリー・レヴィ)、剣幸(ドナ・マーフィ)、飯島肇(ロン・パールマン)、岡田誠(ブラッド・ギャレット)
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