『塔の上のラプンツェル』は“初めて”づくしのプリンセスだった 屈指の人気を誇る理由
10月11日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編50作目となった『塔の上のラプンツェル』(2010年、以下『ラプンツェル』)が放送される。第50作の記念作品として、現代にアップデートされたプリンセスである本作の主人公ラプンツェルは、ディズニープリンセスのなかでも高い人気を誇っている。ほかのプリンセスにはない、彼女の、そして本作の魅力とはいったいなんだろうか? 作品の見どころとともに紐解いていこう。
“初めて”づくしのプリンセス
金色に輝く魔法の髪を持つ少女ラプンツェルは、18年間1度も外に出ることなく、高い塔の上で暮らしていた。生まれてすぐに彼女を誘拐したゴーテルを本当の母親だと信じるラプンツェルは、毎年自分の誕生日に空に浮かぶ「灯り」を見に行くことを夢見ていたが、ゴーテルはそれを許さない。そんなある日、盗みに成功したものの仲間割れし、警備隊に追われていた泥棒のフリン・ライダーが塔に迷い込む。ラプンツェルは彼が盗んだ王冠を取り上げ、自分に「灯り」を見せ、その後無事に塔まで帰せば、王冠を渡すと持ちかけた。そして、しぶしぶ了承したフリンとラプンツェルの冒険が幕を開ける。
『ラプンツェル』は、3DCGで制作されたディズニー初のプリンセス作品であることが広く知られている。前作『プリンセスと魔法のキス』(2009年)は、ディズニー最後のセルアニメ作品となり、『ラプンツェル』以降はプリンセスものも、『アナと雪の女王』(2013年、以下『アナ雪』)や『モアナと伝説の海』(2016年、以下『モアナ』)と、完全に3DCGに移行した。
映像面だけでなく、ラプンツェルはキャラクターにおいても、“初”の要素を多く持っている。その1つは、「プリンセス自身が魔法の力を持っている」ことだ。これまで多くのプリンセスを生み出してきたディズニーだが、ラプンツェルがほかのプリンセスと違っている大きなポイントはここにある。これまでのプリンセスは、魔法の力を持った何者かに助けられたり、他者の魔法によって困難な状況に陥るなどのパターンが多かった。しかしラプンツェルは自身の長い髪と、それが持つ魔法の力を使って冒険をくり広げる。『ラプンツェル』以降、正確にはプリンセスではないが『アナ雪』のエルサや、『モアナ』のモアナも魔法の力を持つキャラクターとして描かれている。新しいプリンセス像の元祖となったのがラプンツェルなのだ。
また、本作はグリム童話の『ラプンツェル』を原作としているが、映画の原題は『Tangled』であり、童話原作の作品で原作とタイトルが違うのも初めてのケース。これは前作『プリンセスと魔法のキス(原題:The Princess and the Frog)』が、そのタイトルのせいで男性客の反応が弱かったため、それを打開するためだったといわれている。プリンセスものであることをあえて前面に出さず、劇中でも相手役であるフリンにラプンツェルと同等に活躍の場を作ることで、観客の性別を問わず楽しめる作品にすることも意識された。
さらにストーリーの面でも本作はこれまでのプリンセスものと、一線を画している。これまでのプリンセスものは、どの作品も誰もが観ることができるG指定だった。しかし本作は、悪党が集まるパブのシーンやフリンがナイフで刺されるシーンなどダークな暴力描写も多いことから、ディズニーアニメーション映画として初めて、視聴にあたって保護者の指導を必要とするPG指定となっている。