『おむすび』橋本環奈に芽生えたギャルへの憧れ 『虎に翼』とも繋がる“食”というテーマ
橋本環奈がヒロインを務める『おむすび』(NHK総合)の第1週を観終えた今、直球の伝統的朝ドラでありながら、「ギャル(マインド)」、そして「震災」を描く、平成史を振り返る代表作になる予感がしている。
第1週で最も大切に描かれているのが、米田家の呪い、つまりは人助けの精神だ。第1話で登場する結(橋本環奈)の「うちは朝ドラヒロインか」というメタ発言が大きな話題になったが、海に飛び込むということよりも、本来の目的は帽子を海に落としてしまった小学生を助けるというところにある。
週の終わり、第5話で描かれるのも、結がティッシュ配りの最中にうずくまる、ハギャレンのギャル・スズリン(岡本夏美)を助ける姿。憧れの書道部の先輩・風見(松本怜生)との展覧会を途中で抜け出してでも、結は苦しんでいるスズリンの元に向かうことを選んだということになる。この無償の愛は、やがて深く描かれることになる、1995年の阪神・淡路大震災での被災経験にも繋がっていくだろう。
そして、前者と後者の着地点として共通しているのが食である。スズリンは、病院で栄養不足と診断された。ネイリストになるために、スナック菓子だけで食費を切り詰めていたのだ。スズリンは父親が中学2年生の頃に亡くなり、母親は仕事を掛け持ちして、スズリン本人も高校をやめてアルバイトをしている。そんなスズリンに結が手渡したのが、佳代(宮崎美子)が持たせてくれていたおむすびだ。
結の「美味しいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」というスズリンへのセリフは、少しの違いはあれどほぼ同じ言葉で、第1話でトマトを手渡した小学生にも届けられている。無我夢中でおにぎりを食べるスズリン。彼女が思い出すのは、家族でお弁当を作ってピクニックに出かけた、福岡の「海の中道」での懐かしい記憶。スズリンからは涙だけでなく、自然と笑顔もこぼれ出す。例えば、先日まで放送されていた朝ドラ『虎に翼』で「美味しいものは一緒に」と寅子(伊藤沙莉)が優三(仲野太賀)とかぼちゃ饅頭を分け合っていたように、「食」というのは多くの朝ドラで描かれている普遍的なテーマでもあるが、後に結が栄養士となることが明らかになっている『おむすび』にとっては冒頭で先述したあらゆるテーマを結びつける、このドラマの根幹とも言える大きなテーマだ。