『名探偵ピカチュウ』が発展させた原作ゲームの世界 大谷育江らおなじみの声優陣も
10月4日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で、任天堂のゲームを原作とした大ヒット映画『名探偵ピカチュウ』(2019年)が放送される。任天堂のゲームとしては『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993年)以来、2作目のハリウッド実写映画化作品だ。本作では、CGで表現されたポケモンたちが実写に見事にマッチし、まるで本当に現実にいるかのような存在感が大きな反響を呼んだ。任天堂ゲーム原作の映画は、2023年のアニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のヒットも記憶に新しいが、今後『ゼルダの伝説』の実写映画公開も控えている。ここでは任天堂ゲーム原作の映画として世界中でヒットを記録し、人々を魅了した『名探偵ピカチュウ』の魅力を探っていこう。
ピカチュウをはじめとする表情豊かなポケモンたち
長らく連絡を取っていなかった父ハリーが亡くなったとの知らせを受け、彼が住んでいたライムシティを訪れた21歳のティム(ジャスティス・スミス)。父の探偵事務所にやってきた彼は、そこで人の言葉を話すピカチュウ(声・顔のモーションキャプチャ:ライアン・レイノルズ)に出会う。しかし、ピカチュウの言葉を理解できるのはティムだけ。ピカチュウは自分は記憶を失っているものの、ハリーの相棒だったに違いない、彼はまだ生きているはずだと話し、ティムはピカチュウとともに父が追っていた事件の真相に迫っていく。
本作の肝といえるのが、この「人の言葉を話すピカチュウ」だ。もふもふのかわいらしい見た目とは裏腹に、声は中年男性。コーヒー中毒で、まるでおっさんだ。そのギャップがキャラクターの最大の魅力となっている。ティムの相棒となったピカチュウは表情豊かで、さまざまな場面で違った顔を見せる。なかでも肩を落としてとぼとぼと歩く姿は「しわしわピカチュウ」と言われ、ネットで画像が拡散されるなど、多くの人の心をつかんだ。
また本作が多くの観客にウケたのは、ピカチュウをはじめとした見せ場の多いポケモンが、初期からのキャラクターであることも挙げられるだろう。ポケモン凶暴化事件の謎を追っていた新米記者ルーシー(キャスリン・ニュートン)の相棒はコダックであり、ティムたちに事件の手がかりを教えるのはバリヤード、違法なスタジアムでピカチュウと戦うのはリザードン、そして事件の鍵を握るのはミュウツーだ。彼らは1996年に発売された第1世代のゲーム『ポケットモンスター 赤・緑』で登場した151種類のうちに入る。今やポケモンは1025種類存在する(2024年10月時点)が、熱心なファンでない限り、すべてを把握することは不可能だろう。しかし、初期からのポケモンに見せ場を多く用意することで、長くポケモンから離れていた世代も楽しめる作品となっているのだ。
一方で、街中やスタジアムなどでは新しい世代のポケモンの姿も見られ、エイパムやドゴーム、ゲッコウガ、ドダイロスなども印象的な場面で登場している。長くつづくシリーズだからこそ、初期からのなじみ深いポケモンで過去作品のユーザーを含む幅広い観客層を惹きつけつつ、ちょっとしたディテールに新たな世代のポケモンも登場させる、遊び心あふれた粋な演出となっているのだ。