『虎に翼』メイクに依存しない伊藤沙莉の“加齢”の表現 “老い”の名演は近年の朝ドラでも

『虎に翼』伊藤沙莉、加齢を感じさせる名演

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』のヒロイン・寅子(伊藤沙莉)は、東京家庭裁判所少年部部長にまで出世し、年齢は50代後半に。義理の息子・朋一(井上祐貴)が父親になった時点で、寅子は孫のいる祖母の立場となった。主演の伊藤は、第1話から寅子を演じ続けており、このまま最晩年となる最終回までキャストが代わることはない模様だ。

 歴代の主な朝ドラは、主人公の幼少期から描かれる場合は子役が演じて、その後、主演俳優に交代するというケースが多く、作品によっては、晩年はさらに俳優が代わることもあった。2010年代以降の朝ドラでいうと、『おひさま』(2011年度前期)は、幼少期を八木優希が演じ、主演の井上真央を経て、晩年を若尾文子が、『カーネーション』(2011年度後期)は、二宮星が少女時代を演じ、主演の尾野真千子を経て、晩年を夏木マリが演じた。

 そのほかの作品では、『あまちゃん』(2013年度前期)や『ひよっこ』(2017年度前期)のように、ヒロインがそれほど年を取らないまま最終回を迎えるか、晩年まで主演俳優が演じ続ける場合が多い。その際、キャストは“老い”を表現するために、老けメイクをしたり、演技によって年齢を感じさせるようにしたりと、朝ドラ恒例の“老け”演出が施される。

 『エール』(2020年度前期)は、主人公・裕一を演じた窪田正孝と、ヒロイン・音を演じた二階堂ふみが、最晩年まで寄り添う夫婦に扮した。乳ガンを患い、療養するようになった音が、裕一に頼んで海に連れて行ってもらい、裕一は音に感謝の言葉を伝える。老夫婦になった2人の場面は感動的で忘れられず、窪田と二階堂による“老い”の表現が秀逸だった。

『らんまん』は“死”よりも“生き様”を描く 万太郎が寿恵子に誓った永遠の愛に涙

『らんまん』(NHK総合)の週タイトルが全て植物の名で統一されているのは、放送が終わった時、それ自体がまた万太郎(神木隆之介)の…

 『らんまん』(2023年度前期)も、神木隆之介が主人公・万太郎を、浜辺美波が妻の寿恵子を、それぞれ高齢となるまで演じた。終の住処となった練馬で、万太郎は体調を崩していく寿恵子を看病しながら、日本全国の草花を載せた図鑑を完成させるという寿恵子との約束を果たすため、日々研究に取り組んだ。万太郎と結婚してから、ずっと夫を支え続けた寿恵子は、最後まで彼の熱意を信じ、そんな妻を万太郎は全身で愛し続けた。神木と浜辺の“老い”の演技は愛らしく、そして微笑ましかった。

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