『虎に翼』が描く安田講堂事件を解説 寅子らに問われる家庭裁判所の“存在意義”
このような一連の事件の背景にあるのは、簡単に言ってしまえば学生たちの“権力に対する不満”である。第116話でも未成年の犯罪にじっくりと向き合う寅子の姿が描かれていたが、安田講堂事件で逮捕された薫の人生に寄り添って、正しい道筋を示してくれるのではないだろうか。この事件から学べることがあるとすれば、「暴力では権力を正しく変えることはできない」ということ。建設的な議論を重ねていくことの重要性を痛感するばかりだ。
さて、気になるのは東大進学後に一切描かれていない美佐江(片岡凜)の行方である。すでに30代を超えていることを考えると安田講堂事件に当事者として関わっている可能性は少ないが、第117話では少年法と尊属殺人の問題が浮かび上がってきた。寅子がかつての美佐江からの問いに再び向き合うのではないだろうか。
家庭裁判所が扱う範囲は幅広い。若者の悩みや苦しみに寄り添い、正しく生きるために更正させる家裁の役割は現代においても非常に重要である。家裁の存在意義を改めて考えさせられるエピソードだ。
参考
※『安田講堂1968-1969』(中公新書)
※『昭和史戦後篇』(平凡社ライブラリー)
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、石田ゆり子、森田望智、土居志央梨、ハ・ヨンス、戸塚純貴、高橋努、平埜生成、塚地武雅、趙珉和、三山凌輝、川床明日香、円井わん、青山凌大、今井悠貴、菊池和澄、井上祐貴、尾碕真花、池田朱那、平田満、余貴美子、沢村一樹、滝藤賢一、松山ケンイチ
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK