『虎に翼』雲野の死、認知症、更年期障害も “老い”に向き合う吉田恵里香の脚本
ドがつくほどのお人好しで、自分がたとえ損をしても困っている人を助けることの方を優先してきた雲野。その温かみのある人柄に加え、実績もある彼の死は大きな痛手だった。原爆裁判の原告たちは不安がり、岩井もすっかり気力を失ってしまう。けれど、雲野は最期の瞬間まで、原爆裁判をきっかけに国に対して損害賠償を求める流れが生まれるのを何としてでも阻止しようとする政府と戦おうとしていた。その意志を遺された人たちは受け継いでいかなければならない。
寅子にとっても雲野は恩人だが、「判決に難癖をつけられては困る」というよねの言葉を受け、葬儀には参列しないことを決める。岩井も「あなただって雲野先生の意志をこんなところで途絶えさせたくないはずだ」という轟の訴えにより気持ちを立て直した。そして、日米安保条約の改定により日米の協力体制が強化された翌月の昭和35年2月、原爆裁判の第1回口頭弁論が始まった。
岩井が訴状の骨子を陳述する中、傍聴席に座ったのは記者の竹中(高橋努)だ。彼もまたすっかり年老いており、『あさイチ』(NHK総合)の“朝ドラ受け”ではMCの博多大吉も驚いた様子で「てっきり寿司屋さんが出てきたのかと思いました」と傍聴が趣味の笹山(田中要次)と勘違いしたことを明かしていた。その笹山だが、寅子が彼の名前を出した時に道男の顔が一瞬曇ったのも気になるところ。長らくの間、姿を見せていない笹山もかなりの高齢だろう。果たして元気にしているのか、多方面に心配の種がばら撒かれた回だった。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、石田ゆり子、岡部たかし、森田望智、上川周作、土居志央梨、平岩紙、戸塚純貴、高橋努、川島潤哉、塚地武雅、趙珉和、平埜生成、井上拓哉、三山凌輝、毎田暖乃、青山凌大、今井悠貴、和田庵、尾碕真花、菊池和澄、余貴美子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK