満島ひかりの“主演俳優”としての器量 二面性を両立させる『ラストマイル』に圧倒される

満島ひかり、『ラストマイル』での華麗な演技

 2024年の“夏休み映画”もようやく出揃ったところ。しかし、まだまだ今年の夏の暑さは続きそう。そんな中、満を持して『ラストマイル』が公開となった。主演を務めるのは満島ひかり。そうだ、アツい夏はまだまだ終わらないのである。

 本作は、『アンナチュラル』(2018年/TBS系)と『MIU404』(2020年/TBS系)の脚本家である野木亜紀子と監督の塚原あゆ子がタッグを組んだ最新作。法医学の世界で奮闘する者たちの姿を描いた『アンナチュラル』と、警視庁の機動捜査隊の活躍を描いた『MIU404』と世界観を共有する、シェアード・ユニバース作品である。これまでにさまざまなキャラクターが登場してはユニークなドラマを展開させてきた世界の中で、新たなる物語が紡がれるわけだ。

 そんな本作は、日本の“物流”をモチーフにしたサスペンスである。流通業界最大のイベントである「ブラックフライデー」の前夜に、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。これがやがて連続爆破事件へと発展し、日本中を震撼させることとなる。

 満島が演じるのは、巨大物流倉庫に配属されたばかりのセンター長・舟渡エレナ。入社2年目にしてこのセンターのチームマネージャーの職に就いている梨本孔(岡田将生)とともに、彼女は彼女たちなりのやり方で、事件に立ち向かっていくのである。

 『ラストマイル』の第一報が出たときは、興奮とともになかなか驚いたものでもあった。主演を務めるのが満島であることに対してだ。

 満島といえば、映画にドラマに舞台にと、それぞれのフィールドの第一線を駆けてきた存在だと誰もが認識しているだろう。佐藤健とダブル主演を務めたNetflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』での好演も記憶に新しい。しかし、こと映画に関していえば、彼女が主役を務めるのは作家性の強い作品ばかり。『ラストマイル』のような予告編からして一級のエンタメ作品であろうことが分かる映画の看板を背負う姿が、うまくイメージできなかったのだ。そもそも映画で主役を務めるのは、『海辺の生と死』(2017年)からおよそ7年ぶりのことである。

 『アンナチュラル』も『MIU404』も放送時に大変な反響を呼んだ人気作品だ。しかも、石原さとみを筆頭に、井浦新、綾野剛、星野源と、全員主役級の顔ぶれ。そこへさらに岡田将生や阿部サダヲ、ディーン・フジオカといった『ラストマイル』からの参戦組が加わり、彼らが今作の物語を駆動させる。これを牽引していくのは、それ相応のプレッシャーというものがあったのではないだろうか。

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