映画『globe tour 1999 Relation』が届ける圧巻のライブ体験 関係者が明かす当時の制作秘話

冒頭の名シーンを支えた“風を読む女”の存在

――アリーナのフロアに縦長なステージが伸びていて、可変するというアイデアはどんなところから?

長井:それは早めに、というか初めにありき、だったかもしれません。予定調和を崩したかったので、既存のステージ形式ではないところから議論を始めました。

長瀬:形から変えてしまおうって。

長井:1回目のドームツアーはとにかく物量も多かったのでツアー輸送トラックをウン十台用意したりと大変で。当時、ドームコンサートツアーといえば11トントラックを開けると長いトラスの部品が1本だけ入ってるとか、やむを得ないところもあって……。

長瀬:それを『globe tour 1999 Relation』のツアーでは大きく改良しました。

長井:トラックに積むことから逆算して、「たとえばトラック◯◯台ぐらいに収めるのはどうよ?」って長瀬さんにお願いしたの。

長瀬:そう。

――わ~、おもしろい。当時CDバブル的なイメージがありながらも、あの非現実なステージセットを全国ツアーで実現させるためにしっかりと現実的な工夫が施されていたのですね。

長井:この方は真面目なので、トラックの荷台の形状、内径を調べて、ちゃんと効率的に納めることを考えて、ステージセットを分解したパーツを作ってくれたんです。

――めちゃいい話ですね。まさに、ステージ裏の秘話だ。

長瀬:ムービングステージってキャスターが付いていたんですよ。いわゆるルーフシステム(天井部)の吊り物を組む間に、別のスペースでで先の準備をして舞台を組んじゃおうと思ったんです。

――はあ~。

長瀬:撤去も終わったらガンガン外して、そのままパッケージにしてトラックに詰めるようにしたの。このアイデアは、フィル・コリンズのツアーがこれに近いことをやっていて。

――へえ~。

長井:それを横目で見てましたね。

長瀬:国立代々木競技場の第一体育館でやられていて。あ、こんな効率的なことをやっているんだってハッとさせられて。ライブが終演して、客出しがはじまるタイミングで舞台を観たら、トラスがそのまま降りてきて。舞台の蓋が開いて照明ごと入っちゃったんです。

――考えられていますね。

長瀬:客出しより撤収が早かったんです。とんでもないことやってるなって思って。それをいつかやりたいなって思っていたら。『globe tour 1999 Relation』があったので。

長井:フィル・コリンズをはじめ、ワールドツアーのプロダクションは参考にもなり、意識もしましたね。ステージ周りがとても機能的に設計されていて。ワールドツアーを行うチームってここまでするのかって驚きました。現場のスタッフと部資材の動きがとにかく緻密に計算され、時間と費用を徹底的にセーブするという効率性が徹底的に追求されていて。

長瀬:そう、『globe tour 1999 Relation』をやるときに参考にしていました。

――あれだけ破格のステージセットながらも、大規模な全国ツアーを実現させるための裏技となったんですね。ちなみに当時、「DEPARTURES」でライブ中に本物の雪を降らせたことも話題となりました。

長井:スノーマシーン?

長瀬:あの頃がはじめてでしたっけ? 特効チームが持っていたんだよね。

長井:そうそう。特効チームに“風を読む女”がいらっしゃった。

――なんですか、そのナウシカみたいな方は。

長井:会場によって空調ダクトの位置、空気の流れも異なるので、会場ごとに風を読まないと、スモークや雪とか変なことになってしまうと。

――ああ、思うような演出にならないというわけですね。

長瀬:岸さんという方が風の流れを読んで、雪がKEIKOの頭の上に綺麗に落ちるようにするんだけど、本番で客が入ると熱気で雪の風向きがが変わるんですよ。それを12台のファンをスイッチングしながら調整するという。

――冒頭のあの名シーンにはそんな逸話があったんですね。

長井:まさに餅は餅屋っていうか、最終的には機械を使ってボタンを押すんでしょうけど、セッティングは手作業でアナログだったんです。

長瀬:今は、もっといいコントロールシステムがあるんですけどね。当時は、ひとつひとつ工夫してやっていたという。

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