『新宿野戦病院』感動的な場面から“笑い”の方向へ 仲野太賀の出遅れ感が物語のフックに

『新宿野戦病院』感動から“笑い”へ

 歌舞伎町の外にある別の病院に移送されたことで顕著に浮き彫りになった医療格差と、それに伴う患者の死を描いた前回から一転、8月7日に放送された『新宿野戦病院』(フジテレビ系)の第6話は、聖まごころ病院の“内側”、すなわち病院関係者たちの物語に徹する。それはもちろん、ヨウコ(小池栄子)が院長(柄本明)と血のつながった娘である事実がひとつの軸としてあり、そこに今回は享(仲野太賀)と啓三(生瀬勝久)の親子の物語も交わっていくこととなる。

 ヨウコが日本の医師免許を持っていなかったことが啓三にバレてしまう。しかし享は、ヨウコがこれまで聖まごころ病院で多くの患者の命を救ってきたことを理由に彼女を擁護。そしてヨウコに好意を寄せていることを院長や啓三らの前で公言するのだが、院長から自分の娘(つまり享からすれば従姉にあたる)であるという事実を知らされ困惑する享。さらに彼は、街で偶然にもホテルから出てくる啓三と舞(橋本愛)の姿を目撃。勇太(濱田岳)を問い詰め、ようやく享は舞がSMの女王として働いている事実に辿り着くのである。

 要するに、このドラマの主人公格のひとりでありながらも視聴者の多くがすでに知っていた情報をずっと知らずにいた享が、ようやく周囲の事態を把握するエピソードであったわけだ。やたらとポジティブであったり、意味不明な蛙化現象を起こしたりなど、どうにもつかみどころのない彼のキャラクターを踏まえれば、ようやく“追いついた”とでもいうべきか。しかも舞の“May”としての活動の予約が3年先まで埋まっていると聞き、「3年先なんて自分がSなのかMなのかわかんねえ」と以前の勇太の発言をそっくりそのまま口にする点で、享の出遅れ具合がさらに強調されている。

 背中に痛みを感じた啓三に対して健康診断を受けるように要求する一連には、ここ数エピソードでたびたび取り上げられている日本の現行の医療制度への肯定的視点が伴う。そこにくわえて、啓三が西洋医学に対して疑問を抱くきっかけとなった11年前のできごとや、兄である院長との軋轢など、啓三の心のなかに引っかかり続けていたわだかまりのようなものが露呈され、解きほぐされていく中盤。一見感動的で少々生真面目なストーリーが運ばれるのかとおもいきや、啓三がSMプレイ中にあらわにする性的嗜好が享と共通していたり、亀甲縛りをされたまま脱臼して運ばれたりと、しっかりと“笑い”の方向へと誘導されるのはこのドラマらしい。

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