『虎に翼』森田望智が“花江を超えた”瞬間 「お芝居の楽しさってこういうところ」

森田望智、『虎に翼』花江役への思い

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』で“もうひとりの主人公”と呼ぶにふさわしい・猪爪花江。主人公・寅子(伊藤沙莉)の親友という立場から、寅子の兄・直道(上川周作)と結婚し義姉に。互いに夫を戦争で亡くしてからは、支え合いながら猪爪家の子供たちを育てている。しかし、第15週では花江の思いが爆発。寅子ともぶつかり合うことになった。

 花江を演じるのは、『おかえりモネ』に続き、本作が2度目の朝ドラ出演となる森田望智。花江の特徴的な喋り方や、寅子役の伊藤沙莉との印象深いシーン、さらには子役たちとの触れ合いまで、撮影の裏側を聞いた。

森田望智が考える寅子と花江の関係は……

――演じる花江と自身の共通点は?

森田望智(以下、森田):花江ちゃんは今までにやったどの役よりも演じやすくて、それはたぶん気持ちがわかるからだと思うんです。一見すごく柔らかそうだけれども、とても強いし、頑固な部分もあるし、しっかり者。そういう見た目とのギャップという意味では、私も実際は違うのに「柔らかい」と思われることのほうが多いので(笑)、似てるなと思います。それから私は花江ちゃんの“周りが見えているところ”が好きなんですが、本質を見抜く力があるのに、自分のことになると見えなくなってしまう。私も自分のことがよくわからなくなって、「どれが私だっけ?」となることがあるので、そういうところも似てるかなと思います。

――花江はゆったりとした喋り方が特徴的ですが、どのように役作りされたのでしょうか?

森田:最初に台本を読んだときに、花江ちゃんのセリフの後にハートマークや音符マークがついていたので、私は声のトーンを上げた喋り方を連想しました。衣装合わせのときにも「花江ちゃんはピンクだよね」と言われて、やっぱりそういう感じなのか、と。実際、お花があしらわれたピンクのかわいらしいお着物で、「これを選ぶ子ということは、これが似合わなくてはいけない」というところから逆算して、花江ちゃんの喋り方になっていきました。私の年齢より若い10代の花江ちゃんをやるときには、少し幼いというか、まだ地に足がつく手前のようなイメージをしていました。そこからだんだんお母さんとしてたくましくなっていくと、(喋り方も)どっしりとしていく。あとは私の母の若かりし頃のホームビデオを見たときに、すごく声が高かったんです。声って変わらないようで変わっていくんだと思ったので、そういう意識も頭の片隅に持つようにしています。

――これまで寅子役の伊藤沙莉さんとお芝居されてきて、印象に残っているシーンを教えてください。

森田:第12週ではるさん(石田ゆり子)が亡くなってしまった後に、トラちゃんと花江ちゃんが日記を燃やすシーンがあって。はるさんからの最後のメッセージを読んだあとに、「本当にお母さんがお母さんでよかった」とトラちゃんの思いが溢れてしまうんです。そんなトラちゃんの肩を花江ちゃんが抱くという台本なんですが、その後、アドリブを1、2分くらい回してくれていたんですよね。そこは沙莉ちゃんだからこそ出た自然な気持ちであったり、今まで半年撮影を続けている中で生まれたものであったり、花江ちゃんとトラちゃんを超えて私と沙莉ちゃんの気持ちが通ったシーンでもあったので、すごく印象に残っています。本当にゆり子さん演じるはるさんが大好きで、いなくなってしまったことに対して役としても、自分としても思いが乗って、お芝居の垣根がなかったなと。それはきっと沙莉ちゃんも同じだっただろうなと感じるので、「お芝居の楽しさってこういうところだよな」と思った大切なシーンになりました。

――アドリブで撮影が続くことは聞かされていなかったのでしょうか?

森田:そうですね。アドリブが好きな現場ということもあるんですが、台本にはないその後のトラちゃんと花江ちゃんを映したかった、見てみたかった、というのもあると思います。全部が全部オンエアで使われなかったとしても、そのときの情景、その1分間、2分間が、私の記憶の中には残っているし、花江ちゃんの記憶にも刻まれている。アドリブは使われる使われないが大事ではなくて、その役としての思い出になるものだと思っているので、すごく大切な時間だったなと思います。

――学生時代から長い時間を一緒に過ごしてきた花江と寅子の関係性について、どう感じていますか?

森田:花江ちゃんとトラちゃんの関係性はどんどん変わっていって、戻ったり離れたり、同じような関係性のときがないというか。普通のドラマや映画だと、その関係性の一瞬を描くことが多いですが、「その一瞬の後にどうなるのか」「またその一瞬の後にどうなるのか」というところまで描かれていて、すごく人間らしいなと思います。第15週には、ずっと親友だったトラちゃんと言い合いになるシーンがあって。台本では花江ちゃんの今まで言えなかったトラちゃんへの不満が爆発する流れでしたが、私は「なんで親友なのに言いたいことが言えないんだろう」「家族だから言いたいことを言っていいのに、花江ちゃんってこんなに我慢する子だっけ?」と考えていたんですが、監督から「これは親友のケンカではなく夫婦ゲンカです」と言われて腑に落ちました。外で働いてお金を稼いでくれているトラちゃんは“夫”。花江は妻として夫を支えなくてはいけない存在だから自分の気持ちには蓋をして、蓋をして、という思いだったんです。今回のけんかを経て、また家族のかたちが変わって、トラちゃんに対して夫婦であり、家族であり、親友であり、といういろんな思いが乗っていく。すごく面白いですし、(そういった関係性の変化は)朝ドラという長丁場ならではだなと思っています。

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