永瀬廉、『よめぼく』で“揺れ動く”人物像を巧みに表現 同情を滲ませない眼差しの優しさ

 終わりがくるからこそ、始めてしまうと切なくなる恋。だけれども既に出会ってしまい知らず知らずのうちに始まってしまっている恋。それでも言葉にして決定づけてしまうと互いに苦しくなってしまうからこそ、努めて“普通の17歳の生活”を優先しようとする秋人と春奈の健気さには泣けてくる。

 互いにあえて言葉に出そうとせず核心を避け続けることで、むしろお互いに大事にしている想いがはっきりとかたどられるような絶妙な距離感を、永瀬と出口が見せてくれた。

 そして、本作の見どころは何と言っても、秋人だけでなく実は春奈も優しい嘘をついていたことが終盤に明かされる点にあるだろう。そこで秋人は自分が嘘をついていた心苦しさよりも、それに春奈が付き合ってくれていたことを知り大号泣するのだ。こんなところもいかにも“秋人らしい”。

 互いを誰よりも思いやり合い、生かし生かされていた秋人と春奈だからこそ、時間や場所を超えて1枚の見事な絵画の合作が出来上がったように、片想いや両想いの言葉では片付けられない結びつきの奇跡を見せてもらえた。

■公開情報
Netflix映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』
Netflixにて世界独占配信中
出演:永瀬廉、出口夏希、横田真悠、杏花、秋谷郁甫、大友一生、月島琉衣、野間口徹、水橋研二、夙川アトム、木村文乃、大塚寧々、仲村トオル、松雪泰子
原作:森田碧『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』(ポプラ社刊)
監督:三木孝浩
脚本:吉田智子
音楽:亀田誠治
主題歌:suis from ヨルシカ「若者のすべて」(Polydor Records)
エグゼクティブ・プロデューサー:秋田周平
プロデュース:春名慶
プロデューサー:渡久地翔、坂野達哉
制作:日活 ジャンゴフィルム

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