『笑うマトリョーシカ』政治家役・櫻井翔の恐るべきハマり具合い “いびつさ”がたまらない

『笑うマトリョーシカ』櫻井翔がハマり役

 後日、清家の誘いで2人きりでコンタクトをとることになった道上。この時、優しく話をする清家は、一見すると血の通った人間のようにも見えたのではないか。しかし、視聴者の頭をよぎるのは不安な思いだ。ちらりと挟まれる“寿司職人”のカットに、「この言葉さえも、鈴木が用意したシナリオの一部なのではないか」という疑念が湧き上がる。

 会話の最後、清家は「これからも僕を見ていてくださいね」と言い残す。この一言と共に浮かべる櫻井の表情が、視聴者の背筋を凍らせたのではないか。親しげな口調とは裏腹に、その目には空虚さが宿り、それゆえに“何を考えているのかわからない”不気味な印象を与える。

 春のヒット作『新空港占拠』(日本テレビ系)では、熱く、時にコミカルな武蔵三郎役を好演した櫻井翔。その演技の幅広さが、ここで遺憾なく発揮された。『笑うマトリョーシカ』第1話では、清家の表面的な温かさと内面の虚ろさを一瞬の絶妙なバランスで表現していたが、今後櫻井演じる清家がどんな表情を見せてくれるのかが楽しみだ。

 その後、清家から送られてきた論文を解読する道上。そこで彼女が得たのは、「主体性がない」清家の姿のブレーンが鈴木であるという確信だった。

 そんな中、清家が記者会見で語った親族里親の話に、道上は戸惑いを覚える。その内容が、以前自分が話したことと酷似していたからだ。この気味の悪い一致に、道上は清家の本質を垣間見る。清家は自分の意思を持たない代わりに、周囲の意見を真綿のように吸収する特異な能力の持ち主なのではないか、と。そして道上は、この状況を「これは清家からのSOSなのではないか」と解釈したのだった。

 マトリョーシカ人形には、ある言い伝えがある。最も小さな人形に願い事をして蓋を閉じると、どんな願いも叶うというものだ。清家という外側の人形の中に潜む「誰か」は、鈴木だけなのだろうか。その内側にはどんな野望が隠されているのか。この謎めいた入れ子構造の正体が、物語の進行とともに明らかになっていくことだろう。

 視聴者は、まるでマトリョーシカ人形を一つずつ開けていくように、登場人物たちの真の姿を追い求めることになる。それらが解き明かされていく様を、私たちは固唾を呑んで見守ることになりそうだ。

■放送情報
金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:水川あさみ、玉山鉄二、丸山智己、和田正人、渡辺大、曽田陵介、渡辺いっけい、加藤雅也、筒井真理子、高岡早紀、櫻井翔
原作:早見和真『笑うマトリョーシカ』(文藝春秋)
脚本:いずみ吉紘、神田優
主題歌:由薫「Sunshade」(Polydor Records)
プロデューサー:橋本芙美
演出:岩田和行
編成:杉田彩佳
製作:共同テレビ、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/waraumatryoshka_tbs/
公式X(旧Twitter):@matryoshka_tbs
公式Instagram:waraumatryoshka_tbs
公式TikTok:@waraumatryoshka_tbs

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる