川口春奈×松下洸平らが切り取った2024年の今 『9ボーダー』は数年後も振り返りたい一作に

『9ボーダー』が切り取った2024年の今

 19歳、29歳、39歳。人生の“大台”を目の前に悩み、葛藤していた三姉妹の物語『9ボーダー』(TBS系)がいよいよクライマックスを迎える。一時は停滞していたように見えた彼女たちの物語は、ホームであるおおば湯のリニューアル計画と共に一気に動き出す。離婚を受け入れた六月(木南晴夏)は、海外に行く直前の朔(井之脇海)からプロポーズされ、交際0日婚の可能性が出てきた。いつもダラダラしていた八海(畑芽育)は料理の才能を活かし、新設したカフェの台所を担っており、七苗(川口春奈)は会社員時代に培った行動力とセンスで、昔ながらのおおば湯をオシャレ銭湯へと生まれ変わらせた。

 数年前にとある9ボーダーを乗り越え、次の9ボーダーまでもう少し時間がある筆者は、そんなこともあったような……なかったような……と昔の自分に思いを馳せながら、三姉妹の奮闘ぶりを眺めてきた。欲をいえばもう少し踏み込んだドラマが観たかったが(悩むテーマが山ほどありそうな六月パートがトントン拍子に話が進んで全体的にあっさりしていたのがもったいない)、映画『カラオケ行こ!』で瞬く間に若手注目株の仲間入りを果たした齋藤潤の途中参戦も含め、2024年の“今”を感じる作品になっていたのではないだろうか。

 作品全体に漂う“今っぽさ”の正体は、なんといっても川口春奈×松下洸平コンビ。まさに2024年を象徴するようなドリームキャスティングだった。今作と同じく新井順子プロデューサーが手がけた『着飾る恋には理由があって』(TBS系)、一大ブームを巻き起こした『silent』(フジテレビ系)、そして昨年はドラマ好きの中でも評判だった『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)など、出演作がたびたび話題になる川口。七苗と同じく29歳で、ちょうど9ボーダーの川口にとってもメモリアルな作品になったことだろう。

 相手役を務めた松下は、現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)など、話題作への出演が後を絶たない。出世作となった朝ドラ『スカーレット』(NHK総合)をはじめ、あらゆる作品で“〇〇沼”を生み出してきたが、今作のコウタロウは松下洸平至上最も“ハマってはいけない沼”ではなかっただろうか……? 誰の目から見ても“好青年”に映る顔だちに、全てを許してしまいたくなるようなとろんとした語り口。コウタロウが現れるとなぜか「こわい」の気持ちが先行したのは、自制心が働いたせいかもしれない。松下のことは様々な作品で見かけていたため、すっかり知り尽くしたような気分になっていたのだが、改めて彼の演技力の底知れなさに驚かされたキャラクターである。

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