サメは我々のすぐそばに Netflix『セーヌ川の水面の下に』で味わう衝撃の「はあ?」体験

『セーヌ川の水面の下に』で味わう衝撃体験

 本記事はあくまで『セーヌ川の水面の下に』未見の人に向けられたものなため、具体的な内容をここに記すことはできない。でも、とんでもないシーンがあることだけは言わせてほしい。本当にエラいことになるシーンがある。映画を観ていて思わず「はあ?」と口に出すほどの衝撃を味わえるのは名作を観る以上に限られた体験であり、貴重なものだ。また『セーヌ川の水面の下に』の例のシーンはそれ自体決して浮足立ったものではなく、「環境問題」という一貫したテーマのもとに成り立っている。だからOKというわけではないが、あらゆるものを置き去りにするような(しかして一貫したテーマを基にした)展開に茫然自失となるか、あるいは大興奮するのは間違いない。

 リュミエール兄弟がサロン・ナンディアンで上映した原始の映画のひとつとして知られる『ラ・シオタ駅への列車の到着』を観た観客は、列車がスクリーンから飛び出してくるような錯覚に襲われ、思わず逃げ出したのだという。列車が駅のホームへと到着するシンプルな映像は「列車が我々に迫り、押しつぶそうとしてくる」という衝撃を観客に与えた。ただの俗説に過ぎないという意見があることに留意しつつ、この映画史の1ページ目は映画の核心を突いているように思う。現実に肉薄し、時に飛び越え、そして観客を驚愕させる。映画とは常に迫るものであったのだ。

 世界ではじめてシネマトグラフが上映された国のサメ映画『セーヌ川の水面の下に』のラストはスクリーンを越えて現実の危機として我々に迫るものがある。確かにとんでもない映画であるが、環境問題とサメ映画に対する実直な作劇によって衝撃がこちらの世界に肉薄しているのだ。サメは我々のすぐそばにいる。そのことを決して忘れてはならない。

■配信情報
『セーヌ川の水面の下に』
Netflixにて独占配信中
監督:ザヴィエ・ジャン
出演:ベレニス・ベジョ、ナシム・リエス、レア・レヴィアン
©2023 Netflix, Inc.

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