“本物”の笠置シヅ子を見逃すな! 『ブギウギ』視聴者必見の特集『笠置シヅ子スヰング伝説』

必見の特集『笠置シヅ子スヰング伝説』

 6月9日、CSホームドラマチャンネルにて、オリジナル特番 『笠置シヅ子スヰング伝説』が放送される。同チャンネルでは、先行して5月12日、19日に『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(前・後編)を放送し、「東京ブギウギ」以降、「ブギの女王」時代の笠置シヅ子の魅力に迫ったが、このたび放送される『笠置シヅ子スヰング伝説』では、さらに時代を遡って「ラッパと娘」以降、「スヰングの女王」時代の笠置シヅ子の魅力を解き明かす。

 当番組の目玉はなんといっても、今年3月に発見され、ニュースでも報道された「戦前の笠置シヅ子の貴重映像」だ。神戸映画資料館が収蔵品を調査する過程で見つかったこの35mmフィルムには、松竹楽劇団に所属していた時代の笠置シヅ子が歌って踊る姿が収録されており、1939年の終わりから1940年のはじめにかけて制作されたと見られる。戦前の笠置シヅ子の実演の様子を収めた映像は、現時点でこのフィルムが唯一無二だと言われている。

 フィルムには、笠置シヅ子が歌って踊る「ラッパと娘」「ほっとちゃいな」「ハリウッド見物」の3曲が収められているほか、同じく松竹楽劇団に所属していたSGDスイングバンドによる演奏や、リズム・ボーイズの「お江戸日本橋」、やんちゃガールズの「支那の朝」なども収録。現代で言うなら「オムニバス式のミュージックビデオ」のような構成となっている。

 『笠置シヅ子スヰング伝説』では、これらの映像をノーカットでテレビ初放送し、「日本一笠置シヅ子に詳しい」との呼び声高い、娯楽映画研究家で「オトナの歌謡曲」プロデューサーの佐藤利明が解説。スウィングの女王・笠置シヅ子の魅力を語り尽くす。

 本稿では放送に先がけて、フィルムに収録された戦前の笠置シヅ子による3曲のパフォーマンスの魅力をご紹介したい。

「ラッパと娘」

「ラッパと娘」写真提供=神戸映画資料館
「ラッパと娘」写真提供=神戸映画資料館

 笠置シヅ子をモデルとし、2023年10月から2024年3月まで放送されたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の「第二の主題歌」と言ってもいいほど、視聴者に親しまれたこの曲。主人公・福来スズ子を演じた趣里がカバーして劇中で歌ったこの曲を、今回朝ドラで初めて耳にしたという視聴者がほとんどだろう。筆者もその一人である。「東京ブギウギ」に代表される「ポップス」のイメージが強い笠置シヅ子が、戦前にこんなにクールでブルージーで“スウィング”したJAZZを歌っていたとは露知らず、度肝を抜かれた。

「ラッパと娘」写真提供=神戸映画資料館
「ラッパと娘」写真提供=神戸映画資料館

 『ブギウギ』の最終週で、スズ子が歌手引退を決め、羽鳥善一(演:草彅剛/服部良一がモデル)に向けて言った「ワテはいつまでも、先生の最高の人形でおりたかったんです」という台詞が非常に印象的だった。これは、笠置シヅ子が自伝『歌う自画像』の中で、「ラッパと娘」以降の笠置の全曲を作曲した恩師・服部良一と自身の関係を書き表した一節が元になっている。笠置は2人の関係性を、「人形遣いと人形、浄瑠璃の太夫と三味線のように切っても切れない関係」と記している。そして、今回この戦前の笠置シヅ子の「ラッパと娘」の実演を見て驚いた。ワンピースに大きなリボン、ピンヒールを履いて歌い踊る笠置シヅ子の佇まいが、まさに「人形」のようなのだ。笠置シヅ子は、曲の世界観に合わせてキャラクターを構築し、その“キャラ”を憑依させて歌うタイプの歌手なのかもしれない。

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