ジギー・マーリー、ボブ・マーリー映画の舞台裏を語る 「父の人間性を改めて理解できた」

ボブ・マーリー息子が明かす伝記映画の舞台裏

「父の人間性というものを改めて理解できた」

(左から)キングズリー・ベン=アディル、ジギー・マーリー

ーーボブ・マーリーを演じたキングズリー・ベン=アディルは、見た目や話し方、歌い方などかなりボブ・マーリーに寄せているように見えました。あなたから彼に対して、何かアドバイスをしたり指示したことはありますか?

ジギー:まず、完璧にボブを体現することなど不可能です。誰もボブになり変わることなどできません。ボブは世界にただ1人、唯一無二の存在ですから。キングズリーは彼独自の解釈のもと、俳優として、また1人のアーティストして、ビジュアル面から感情面まで見事に演じ切ってくれたと思います。彼とは実にいろいろなことを話しました。ボブのことだけじゃなく、人生についてもです。そうした会話を通じて、ボブがどんなバイブスやエネルギーを放っていたのか、感覚的に掴んでもらいたかったんです。ボブがこの世にいない現在、ボブに最も近い存在と言えば、僕たちだけですから。あれこれアドバイスするなかで、あるシーンでは「ちょっと待って。ボブは階段を上るとき、1段ずつじゃなくて2段ずつだったよ」なんてジョークでからかったりもしましたね(笑)。

ーー完成した映画の感想を教えてください。

ジギー:とても満足のいく作品に仕上がりました。ボブの音楽と同様、映画全編がひとつのメッセージのような作品です。団結と和平、真の人間性という大事なメッセージが込められています。音楽を通じて人々を結びつけようと努力する過程で様々な障壁にぶち当たり、自分がこの世に生まれてきた意味や目的について深く考えながら前に進んでいく。そんなボブの人生の道のりを通して、彼がどんな人間だったかを知ってもらえると思います。複雑なストーリーではなく、むしろ単純なストーリーです。ボブは単純な人間だったし、彼の音楽も、インテリ向けではなく、子どもでも理解できるような実にシンプルなものでしたから。

ーーボブ・マーリーが亡くなったとき、あなたはまだ12歳だったと思いますが、彼との思い出で最も記憶に残っていることはなんですか?

ジギー:父との思い出は全て記憶に残っているけれど、やはり個人的には、父と兄弟とでジンバブエを訪れたときのことですね。その旅を通して、汎アフリカ主義について初めて学んだと同時に、音楽が民族解放に大きな役割を果たし得ること、そして父が革命家でもあるということを知って、衝撃を受けたのを覚えています。飛行機でジンバブエに行って、家族みんなで同じ部屋で寝泊まりしたんです。美味しい食事をたくさん食べて、サッカーの試合も見に行きました。そして、ジンバブエがイギリスの植民地支配から解放され、独立国家になる瞬間を目にしました。まだ子どもだった僕に、強烈なインパクトを与えた旅でしたね。

ーーボブ・マーリーが世に残した音楽が、時代や世代を超えて多くの人に愛される理由はどこにあると思いますか?

ジギー:音楽はもちろんですが、ボブは1人の人間として愛されているように思います。音楽がどれだけ素晴らしくても、ろくでなしだったら多くの人に愛されはしないだろうから(笑)。そもそもボブという人間と彼の音楽は一対で、切り離すことなどできません。ボブは一貫して、自分が感じ、考えることをリアルに歌い続けてきました。インタビューなどを通じて、みんなそれぞれに“ボブ・マーリーはこういう人”といったイメージを抱いていると思いますが、共通して言えるのは、誰もがボブのことを叔父さんや父親、兄弟といった、家族のような身近な存在に感じているということ。それはとても大事なことだと思います。そんなふうに、人間として深い繋がりを感じられるからこそ、ボブは世代を超えて多くの人々に愛されているんだと思います。

ーー音楽家として、また父親としてのボブ・マーリーについて、今回の映画を通して新たに感じたこと、発見したことがあれば教えてください。

ジギー:今回の映画を通して、父の人間性というものを改めて理解できた気がします。弱さや脆さも含めた生身の彼をね。感情面に焦点を当てることで、表面下で渦巻いていた感情を知ることができました。インタビューやコンサートからは垣間見ることさえできない、ボブ本人だけが抱えていた感情を追求することが、この映画の目的でもありましたから。様々な状況下で、彼が何を思い、どんな気持ちでいたのか。銃撃で命を落としかけ、祖国を追われ、がんを宣告され、自分が生きる道や人生の目的についていろいろと考えさせられたはずです。そういった、誰にも見せることなく、自分の内だけに抱えていた父の思いを、少しだけ理解できたような気がします。

■公開情報
『ボブ・マーリー:ONE LOVE』
全国公開中
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
出演:キングズリー・ベン=アディル、ラシャーナ・リンチ
脚本:テレンス・ウィンター、フランク・E・フラワーズ、ザック・ベイリン、レイナルド・マーカス・グリーン
配給:東和ピクチャーズ
©2024 PARAMOUNT PICTURES
公式サイト:https://bobmarley-onelove.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/BM_OneLove_JP

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