『虎に翼』約3分間の心震わせる伊藤沙莉の演説 “魔女5”が地獄の先でまた再会できる日まで
朝鮮に帰ることを余儀なくされた香淑(ハ・ヨンス)、母・寿子(筒井真理子)を思い有馬男爵との結婚を選ばざるをえなかった涼子(桜井ユキ)、息子の光三郎(石塚陸翔)を守るため家を飛び出した梅子(平岩紙)。よね(土居志央梨)は口述試験で試験委員から服装を批判され、「偏見をこっちに押し付けるな」と啖呵を切ってしまっていた。それでもよねは自分を曲げずに合格してみせると、寅子への不器用な「おめでとう」とともに決意を新たにする。
そこから寅子の「モン・パパ」の鼻歌と思い出が走馬灯のように流れていき、モヤモヤを帯びたまま祝賀会のシーンに接続されるのは見事な演出構成である。もちろん寅子たちが弁護士になることができたのは喜ばしいが、理不尽な仕打ちのせいで玉(羽瀬川なぎ)を含めた「魔女5」があっという間に散り散りになってしまったのはなんとも呆気なく、視聴者的には当然のモヤモヤ(その矛先も男尊女卑の世の中)と言えるだろう。
つまりは第6週は大きな区切りの週とも言えるが、『あさイチ』(NHK総合)での博多大吉の“朝ドラ受け”を聞いていてハッとしたのが、『虎に翼』の放送が4月1日に開始してからまだ1カ月ほどしか経っていないということだ。あまりに濃密、そして充足感たるや。ちょうど今回が第30話であったが、『虎に翼』は全26週、全130話で展開されることが発表されている。残り100話の中で、寅子は弁護士としてだけでなく、戦争という“地獄”も経験することになる。その先でまた志を共にした同志たちが再会し、あの思い出の海と変わらずにキラキラとした笑顔を見せてくれればいい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK